Bakerization Research · ハッカソン作戦資料

ライセンス×対価還元AIの全地図
「使ったら、払う」をめぐる世界の解決策カタログ(2026年10月22日版)

10月23日のNordicNinja × KDDI∞Labo × Redpine 東京ハッカソンのテーマ「ライセンスされたコンテンツやジャーナリズムを使い、クリエイターに適切な対価が還元されるAIを作ること」に対して、2023年から2026年10月までに世界で試みられ、ネット上に公開されている解決策を、ものすごく詳しい社会評論家とビジネスセンスに長けた起業家の二つの視点で、できる限り漏れなく整理したものです。

作成 2026-10-22 22:40 JST 対象期間 2023年1月〜2026年10月22日 調査方法 7系統の並列調査(Web検索約180回・一次資料閲覧約450ページ)+主要2026年案件のスポット再検証 凡例 確認済一次資料・複数報道で確認 報道単一報道・推計値 未確認裏取りできず

30秒サマリーこの資料の結論を先に。詳細は各章へ。

1. お金は流れ始めた。ただし公開金額は世界で約15件

最大は News Corp–OpenAI(5年で2.5億ドル超)、News Corp–Meta(年最大5,000万ドル)、Reddit–Google(年約6,000万ドル)、NYT–Amazon(年2,000〜2,500万ドル)。それでも各社売上の約1%規模にとどまり、「歓迎すべきだが、ゲームチェンジャーではない」(Reuters Institute・Nielsen)という評価が定着しています。

2. 構造は「学習の一括買い」から「検索時の従量払い」へ

2023〜24年の"all-you-can-eat"型の学習ライセンスは、2025〜26年に Microsoft Publisher Content Marketplace、Googleの2つの有料パイロット、Amazon–Reach、Apple–Siri交渉、Cloudflare Pay Per Use など「使われたときだけ払う」設計に置き換わりつつあります。

3. 規格は増えた。買い手の署名はゼロ

RSL 1.0 は支持1,500団体・AI企業の正式参加0社、IETF aipref の添付草案は2026年5月に失効、IAB CoMP は「経済モデルを定義しない」と明記、SPUR の計測標準にもAI企業の参加表明はありません。供給側の語彙は揃い、需要側の署名がない状態です。

4. 帰属(attribution)は「学習時」は未解決、「検索時」は解ける

学習データの貢献度推定は近似的でゲーム可能(1%のデータ提供者が自分の取り分を2〜8倍に水増しできる研究結果)。実際に金を払っている仕組みは例外なく「量比例」か「引用の有無」です。RAG(検索拡張)なら候補が既知なので、正確な寄与率計算が現実的です。

5. 法律は三極化。日本は「学習は無料」

米国は学習をフェアユースと見る方向(Bartz・Kadrey判決、司法省の意見書)、欧州は報酬権へ(GEMAの連勝、欧州議会決議、欧州委員会の協議)、日本は著作権法30条の4により学習段階の対価請求権が存在しません。日本で対価を作るなら法律ではなく契約・市場・ソフトロー・競争法です。

6. 裁判が作った「価格」は3つ

Anthropic和解=1作品約3,000ドル(海賊版入手の代償であって学習の対価ではない)、読売新聞の主張=1記事16,500円、音楽業界の和解で報じられた1生成あたり0.002〜0.005ドル(情報源の信頼性低)。1記事の「市場価格」はまだ誰も知りません。

7. クリエイター個人への還元が最弱リンク

米NewsGuildの労働協約43件のうちAI収益を記者に分配するものは0件、フランスだけが例外(Le Mondeは25%を記者に)。HarperCollinsは1冊5,000ドルを著者と50/50、Shutterstockは1画像あたり約0.0078ドル。「出版社に届く金」と「作り手に届く金」は別物です。

8. 消費者向け少額課金は何度も失敗した。2026年の賭けは「エージェントが買う」

Blendle・Flattr・Coil・Scroll は全て閉鎖か転換。精神的取引コスト(Szabo)と束ね売りの優位(Bakos–Brynjolfsson)が理由です。だからこそ「人はバンドルで払い、エージェントが上限予算の中で記事単位に買う」設計が本命で、Redpine の preview→confirm はその実装例。ハッカソン案はこの潮流のど真ん中にあります。

この資料の読み方。第1章で問題の構造を数字で押さえ、第2章で解決策を14のカテゴリーに分けて事例・金額・仕組み・状態を並べ、各カテゴリーの末尾に「社会評論家の見立て」と「起業家の見立て」を置いています。第3章・第4章は二視点それぞれの総括、第5章はハッカソン案への示唆、付録Aは全事例を一行ずつ検索できるインデックスです。急ぐ方は、サマリー→第1章のKPI→第5章→付録Aの順でご覧ください。

1. 問題の構造なぜ「使って、払う」が自然には成立しないのか

AIがジャーナリズムを使う経路は、クロール→学習→検索時の参照(RAG)→引用表示→ユーザーの消費、と多層です。従来のウェブ経済は「表示→クリック→広告・購読」で回っていましたが、AI回答はクリックを奪い、しかもどの記事がどれだけ使われたかを外から観測しにくい。以下の数字が、問題の大きさと「対価」が成立しない理由を示しています。

15% → 8%
Google検索でAI Overviewが表示されたときの従来リンクのクリック率(Pew Research、2025年7月)。要約内リンクのクリックは1%。
−33%
Google検索からパブリッシャーへの流入(Chartbeat、2024年11月→2025年11月、米国は−38%)。米主要10サイトの訪問は2年で−32%。
1,800 : 1
Anthropicのクロール数と参照送客数の比(Cloudflare、2025–26年)。OpenAI 850〜1,300:1、Perplexity 111〜186:1、Google約5:1。
60%超
AI検索エンジン8種が出典(記事名・媒体・URL)を誤った割合(Columbia Tow Center、2025年3月、1,600問)。Grok 3は94%。
10% / 4%
週にチャットボットをニュース源に使う人の割合と、AI回答から出典へクリックする人の割合(Reuters Institute DNR 2026)。検索経由は19%。
0.12円/PV
日本のポータル(Yahoo!等)がメディアに払う許諾料の平均=1,000PVあたり124円(公正取引委員会、2023年9月)。既存の「対価」の相場。
50%超
Deezerへの日次新規楽曲のうち完全AI生成の割合(2026年6月、約9万曲/日)。そのストリームの最大85%が不正と判定され非収益化。
20〜33%
主要ウェブコーパス(C4等)の上位ドメインのトークンのうち、1年間でrobots.txtによりAI学習が制限された割合(Data Provenance Initiative「Consent in Crisis」2024年)。

対価を差し込める「層」はどこか — 価値連鎖の7層

解決策を比較するときの最初の軸は「どの層で、何を単位に、誰が価格を決め、誰が使用量を数えるか」です。以下の7層に分けると、世界の試みはほぼ全て位置づけられます。

A. アクセス/クロールHTTPリクエスト単位。価格はパブリッシャー設定。
Cloudflare Pay Per Crawl、TollBit、AWS WAF x402
B. 学習への取り込みデータセット・モデル・映像時間単位。交渉で決まる。
News Corp–OpenAI、HarperCollins、Troveo、CCC
C. 検索時の参照(RAG)クエリ・「使用」・配信トークン単位。買い手が数える。
Microsoft PCM、Google貢献パイロット、Snowflake、Redpine
D. 引用・表示・帰属引用回数・回答内寄与率。アルゴリズムは非公開。
ProRata 50%、Perplexity、Bria、Google
E. 利用者からの支払い購読料の分配。訪問・引用・エージェント操作で按分。
Comet Plus、Apple News+、Blendle(歴史)
F. エージェント決済レールリクエスト単位のステーブルコイン/Lightning決済。
x402、L402、Stripe Agentic Commerce
G. 権利表明(お金なし)許可・禁止の語彙。強制力なし。
robots.txt、RSL、aipref、TDMRep、C2PA

2026年の最大の転換点は、A層からC層への移動です。Pay Per Crawlを発明したCloudflare自身が2026年7月に「クロールは価値の粗い尺度」と認め、9月30日に買い手が「使用」を定義し価格を付ける Pay Per Use へ移行しました。1ページを1回クロールして何千回も引用できる以上、「取りに来た回数」では価値を測れないからです。ただし、C層・D層では使用量を数えるのは買い手(AI側)の自己申告になります。ここが現在の最大の構造的弱点であり、第4章で述べる事業機会でもあります。

2. 解決策の全地図14カテゴリー・約90事例。各カテゴリー末尾に二視点の見立て。

以下、カテゴリーごとに「何をする仕組みか」「主要事例と金額」「2026年10月時点の状態」を並べ、最後に社会評論家と起業家の見立てを添えます。金額は公開情報に限り、非公開は「非公開」、裏取りできないものは未確認を付けています。

2.1 直接ライセンス契約(AI企業とコンテンツ保有者の二者間契約)

最も古典的で、最も多くのお金が動いた経路です。公開されている契約は2023年1月〜2026年6月で91件(Media & the Machine調べ:2023年12件、2024年28件、2025年は一時減少、2026年は36件ペース)。うち「学習」中心の契約から「検索時の表示・引用」中心の契約へ比重が移り、表示・帰属型は2件(2023)→11件(2024)→18件(2025)→約34件(2026見込み)と増えています。元Metaの交渉担当者は「公開1件につき非公開が50〜100件ある」と述べています。

ニュース:金額が報じられた主要契約

契約時期金額(報道)構造権利の範囲記者・作り手への還元
News Corp – OpenAI2024/55年で2.5億ドル超(WSJ)確認済現金+OpenAI技術のクレジット学習+現行・過去記事の表示開示なし。5年純利益の約2.5倍規模
News Corp – Meta2026/3年最大5,000万ドル×3年以上(WSJ)確認済定額年間ライセンス。豪州分は別途(交渉法待ち)アーカイブ+新規、学習+リアルタイム参照開示なし
Reddit – Google2024/2年約6,000万ドル(Reuters)。S-1で契約総額2.03億ドル複数年API/データ契約Gemini学習+検索用リアルタイム構造化アクセス利用者・モデレーターへの還元なし。2026年7月、更新交渉で「価値連動の動的価格」を検討と報道
Reddit – OpenAI2024/5年約7,000万ドル未確認複数年。OpenAIは広告主にも学習+グラウンディングなし。Redditの「その他収益」は2026年Q2に4,300万ドル(売上の約5%)
New York Times – Amazon2025/5年2,000〜2,500万ドル(WSJ)≒NYT売上の約1%複数年定額。NYTがOpenAIを提訴中に締結した初のAI契約Alexa等での要約・抜粋+Amazon独自モデルの学習。ChatGPT・Claude・Perplexity・Google AIOは除外NYT Guild協約にAI収益分配なし。更新時に要求予定
Dotdash Meredith(People Inc)– OpenAI2024/5年1,600万ドル以上の固定+変動(IAC開示)CEO曰く「食べ放題」の一括+変動キッカー。広告ターゲティング用にOpenAIモデルも取得学習+リンク付き表示開示なし。売上15億ドルの約1%
Axel Springer – OpenAI2023/12年「数千万ユーロ」(FT)。過去アーカイブに一時金別途年額+一時金、人気コンテンツは上乗せの変動要素学習+有料記事含む要約表示Business Insiderの労組が契約開示を要求、2025年6月時点で未開示。媒体収益の「1%をはるかに下回る」
Financial Times(日経傘下)– OpenAI2024/4年500〜1,000万ドル報道年額定額学習+帰属付き表示開示なし
Guardian / FT – Google(News AIパイロット)2025/12〜2026/2各社「年1桁百万ポンド」(Press Gazette)約2年の秘密契約、90日解約、NDA+不提訴条項と報道学習・グラウンディング・AI Mode、Google News内の記事概要と音声ブリーフィング開示なし。「平和を借りている」(Google側関係者)
Times of India / Indian Express – OpenAI2026/9約500万ドル/約300万ドル/年未確認(業界推計)非公開選択記事の帰属付き表示、多言語開示なし。Indian ExpressはANI訴訟に参加後に契約した「訴えてから署名」型
AFP – Mistral(Le Chat)2025/1「数百万ユーロ」報道複数年。「データの一回限りの清算ではない」(AFP CEO)1日約2,300本・6言語+1983年以降のアーカイブ。学習には使わないAFPは隣接権協定により記者1人あたり年275ユーロを保証
Le Monde – OpenAI / Perplexity / Meta2024/3〜非公開(「数年にわたる相当額」)定額学習+帰属付き回答(Perplexityは学習なし)AI契約収益の25%を正社員記者にボーナス分配(2024年6月労使協定、上限なし、フランス隣接権法に基づく)。ChatGPT経由の購読転換率はFacebookの20倍、Google Discoverの50倍
Axios – OpenAI2025/1非公開OpenAIが地方ニュースルーム4拠点の新設費を拠出+企業向けChatGPT帰属付き表示間接的(記者の雇用を資金で支える初の構造)
Village Media(カナダ地方紙)– OpenAI2026/9現金価値非公開資金+APIクレジット+技術支援と引き換えに引用表示・引用開示なし
Apple – 出版社(Siri AI向け交渉)2026/8(WSJ)予算「1億ドルから始まる9桁」Siriがコンテンツを使ったときだけ払う変動報酬(Apple News+のクリック按分型)。定額を拒否リアルタイム参照—
ニュース:その他の公開契約一覧(OpenAI約25社・Google 400媒体超・Meta・Microsoft・Amazon・Perplexity・Snowflake 等)
AI企業相手(時期)特徴
OpenAIAP(2023/7、1985年以降のアーカイブ)、Prisa(2024/3)、Vox・The Atlantic(2024/5、OpenAI技術の提供付き)、Time(2024/6、100年分)、Condé Nast(2024/8)、Hearst(2024/10)、Future(2024/12「財務的に重要でない」)、Schibsted(2025/2)、Guardian(2025/2)、Washington Post(2025/4)、Folha・UOL(2026/5、Folhaの訴訟を和解に転換)、Village Media(2026/9)、TOI・Indian Express(2026/9)、さらにインド2社と交渉中「1国1社」が基本。リークされた2024年の提案書は年100〜500万ドルで「保証価値(アーカイブ)+変動価値(表示コンテンツへのエンゲージメント連動)」の2階建て。2026年1月にChatGPT広告開始(無料+8ドルGo)だが出版社への広告分配はなし。契約社は非契約社よりChatGPTでの引用が48%多い(相関)
GoogleAP(2025/1、Gemini向けリアルタイム)、News AIパイロット初期9社(2025/12:Der Spiegel、El País、Folha、Infobae、Kompas、Guardian、TOI、Washington Examiner、WaPo)+Estadão・Antara・Yonhap、FT(2026/2)、Folha(2026/4)、Reach(2026/10/12)、2026/10/15に400媒体超(CNN、Axios、FT、Forbes、Texas Tribune、Post and Courier、Oil City News、Shaw Media追加)Googleは「ライセンスではなく、強化コンテンツの配信と利用への対価を払う商業パートナーシップ」と表現。別途「AI貢献パイロット」(約100サイト、後述)。前身のNews Showcase(2020年、3年で10億ドル)は33か国2,800媒体
MetaReuters(2024/10)、CNN・Fox・Le Monde・People Inc・Daily Caller・Washington Examiner・USA Today Co(2025/12/5)、News Corp(2026/3)、Le Figaro・Prisa・Süddeutsche(2026/3/13)2023〜24年は「ニュースに金は払わない」と宣言しニュースタブを閉鎖、2025年末にMeta AIのリアルタイム回答用に復帰。Llamaの学習にも使うとの報道。カナダでは引き続きニュース遮断
MicrosoftCopilot Daily(2024/10:Reuters、Axel Springer、Hearst、USA Today Network、FT)、Informa/T&F(2024)、HarperCollins(2024/11)、People Inc・USA Today Co・AP(2025/11、PCM)、Nine(豪、2026/7)既存MSNライセンスへの上乗せ払い。2026年2月にPCM(従量制マーケットプレイス)を正式開始
AmazonNYT(2025/5)、Condé Nast・Hearst(2025/7、Rufus向け)、Reach(2026/3、利用量ベースの報酬)、Alexa+で200社超と主張(確認できたのは約13社)2026年7月「Amazon Content Partners」(アフィリエイト+1%、プレミアム広告、月100ドルのAWSクレジットという現物払い)未確認
PerplexityPublishers' Program第1期(2024/7:Time、Der Spiegel、Fortune、Entrepreneur、Texas Tribune、Automattic)、第2期(2024/12:Adweek、Independent、Lee、LA Times、NewsPicks、みんかぶ、Prisa、RTL等15社)、Le Monde(2025/5)、Gannett(2025/7)、Getty(2025/10、表示のみ)、Comet Plus(2025/8〜)ライセンス料ではなく収益分配型(2.2参照)。被訴件数は最多
Snowflake Cortex Knowledge Extensions17社(AP、People Inc、USA Today Network、WaPo、Reutersは39年分のアーカイブ)、買い手は金融機関「6桁ドル」の企業向けRAG契約。Snowflakeはコンテンツ収益を取らず計算・保存で稼ぐ(2026/6)
Dow Jones Factiva8,000ソース(2026/1)、生成AI向け企業契約約20件(2026/3)既存B2Bデータベースに生成AI権を付加

書籍・学術出版:著者への流れ方が最も可視化されている領域

契約時期金額構造著者への還元
HarperCollins – Microsoft2024/111タイトル5,000ドル、3年タイトル単位の定額、ノンフィクション既刊、著者ごとのオプトイン。出力は連続200語/本の5%まで、海賊版サイトからの取得禁止50/50 → 著者2,500ドル(前払金と相殺しない)。Authors Guildは「学習ライセンスだけで出版社が半分は取りすぎ」と批判
Informa / Taylor & Francis – Microsoft2024/5初年度1,000万ドル+2027年までの年次支払い。Informaの2024年AI収益見通しは7,500万ドル超非独占。逐語抜粋に制限著者に相談なし・オプトアウトなし、「契約どおりの印税」とするが研究者は受領を確認できず。Routledgeから離脱を表明する学者も
Wiley – 大手テック2社ほか2024/6〜FY2025 4,400万ドル、FY2026 4,900万ドル、累計1.1億ドル超、FY2027見通し5,000万ドル超。経常AI収益800万ドル一回限りの学習ライセンスからRAG購読へ移行中。41社の出版社と「Nexus」ライセンスサービスオプトアウトを明示的に拒否(「ライセンスは拡張不能というAI側の主張を補強するから」)。著者への支払いは「契約条件どおり」で金額非公開
Cambridge University Press2024/8〜非公開著者オプトインの契約付属書、学習2〜5年で期末にデータ破棄、RAG収益はタイトル別に帰属純AI収益の約20%の印税未確認。大多数の著者が同意、ただし契約成立は遅い
Bloomsbury2025/7〜非公開(「AIライセンス収益の恩恵を受け続けている」2026/7)著者オプトイン方針非公開
Springer Nature – Google2024一時金2,300万ドル未確認既発表論文の定義コーパスを一回限り非公開
Elsevier—ライセンスなし。Metaを提訴(2026年5月、Hachette・McGraw Hillと)——
Bartz v. Anthropic 和解(契約ではないが事実上の価格基準)2026/7/20 最終承認15億ドル、約48万作品、1作品約3,000ドル、初回分配は11/15までに1作品2,203.56ドル4回分割払い。過去の海賊版由来の学習を清算。将来のライセンスではない商業出版は著者/出版社50/50が既定、自費出版・権利回復作品は著者100%。2026年9月、出版社や著作権エージェントが取り分を主張し紛争化

UGC・データプラットフォーム、ストック素材

契約金額・実績投稿者への還元
Stack Overflow – Google(2024/2)/ OpenAI(2024/5)非公開。全社売上約1.15億ドル。質問数は2008年水準に減少なし。回答を削除する利用者が出る反発
Wikimedia Enterprise(Google、Ecosia、ProRata等+2026/1にAmazon・Meta・Microsoft・Mistral・Perplexity)非公開。人間の閲覧−8%、クローラーが高コストリクエストの65%25万人の編集者にはなし(財団の運営資金に)
Shutterstock – OpenAI(6年延長)、Meta、Google、Amazon、Apple、Nvidia 等AI/データライセンス収益 2023年1.04億ドル→2024年約1.38億ドル。Appleは2,500〜5,000万ドル報道。2026年上期は−28%Contributor Fund:半年ごと、データセット契約額をコンテンツ量に比例配分。写真家58人の調査では1画像あたり平均0.0078ドル(2,000枚で約15ドル)
Getty Images – Nvidia(生成AI)/ Perplexity(表示のみ、2025/10)非公開学習セット内資産数の比例配分+ライセンス収益の一部、式は非公開
Adobe Stock(Firefly)非公開年1回の「Contributor Bonus」。承認画像数×直近12か月のライセンス数で重み付け、金額裁量、継続保証なし。「ペニー」との批判

社会評論家の見立て

「平和を借りる」契約群。二者間契約は市場というより休戦協定で、Googleの英国契約には不提訴条項が付くと報じられ、Press Gazetteは「競合がすでに降りたから降りるしかない囚人のジレンマ」と呼びました。News Corp会長の「woo and sue(口説き、訴える)」が示すように、同じ社がOpenAIと契約しPerplexityを訴える。価格は正義ではなく訴訟リスクの関数です。

金額は「丸め誤差」の規模。NYT・Dotdash・Axel Springerの契約はいずれも売上の約1%。Reuters Instituteの調査では、2024年初頭に「大半の金は大手に行く」と35%が、「どの社にもほとんど金は来ない」と48%が予想し、Nielsenは「どちらも正しかった」と総括しています。契約は英語圏の大手に集中し、地方・非英語・中小は不在です。

作り手への還元が構造的に欠落。米国の記者労組の協約43件のうちAI収益を分配するものは0件。出版社は契約の中身を労組にも見せません。例外はフランスの隣接権法(Le Monde 25%、AFP年275ユーロ)だけ。書籍ではWileyとT&Fが著者のオプトアウトを拒み、Stack OverflowとWikipediaの投稿者には一銭も届かない。「ライセンス」は著作権者の勝利であって、創作者の勝利とは限りません。

ライセンスは堀にもなる。Lemley & Noti-Victor(2025年11月)は、大手がフェアユースで使えるものにあえて金を払い「ライセンス市場が存在する」という既成事実を作れば、後続企業の参入コストを上げ、裁判所のフェアユース判断を狭められると警告します(反競争的黙従論)。

起業家の見立て

価格帯が見えたことが最大の収穫。中堅出版社は年100〜500万ドル、グローバル媒体グループは年5,000万ドル、書籍は1冊3,000〜5,000ドル、記者1人年275ユーロ。交渉のアンカーが存在します。Forbes(2026年10月22日「The Trap of AI Licensing」)が言うように、和解が比較価格を作り、出版社は多数で代替可能、AI企業は少数なので、ライセンス価値はコンテンツの限界価値へ収束します。持続する堀は「鮮度」「顧客関係」「引用元であること」です。

一括から従量へ、学習から参照へ。Apple(使われたときだけ払う)、Amazon–Reach(利用量ベース)、Google(貢献度連動)、Microsoft(PCM従量)。買い手が従量を望む以上、使用量の計測・報告・監査が独立した製品領域になります。

「公開1件に非公開50件」はそのまま仲介市場の大きさ。非公開契約の交渉・契約書・精算・監査を標準化できる者が、91件ではなく数千件の市場を相手にできます。

現物払いの発明が増えている。OpenAIクレジット(News Corp)、ニュースルーム資金(Axios)、APIクレジット+技術支援(Village Media)、AWSクレジット(Amazon)。現金のない小規模プレイヤーでも「価値交換」は設計できる、という先例です。

2.2 プラットフォーム主導の対価プログラム(AI企業自身が買い手となる仕組み)

二者間契約の次に現れたのが、AI企業が自社製品の中で「使った分だけ払う」プログラムです。2025年後半から2026年にかけて、Google・Microsoft・Perplexity・Apple が相次いで従量型に踏み出しました。共通点は、買い手が計測者を兼ねることです。

プログラム開始仕組み規模・実績批判・論点
Google「AI貢献パイロット」(Search Console経由)2025年末〜、報道2026/9Gemini・AI Overviews・AI Modeの回答生成に「有意に貢献」したときに支払い。事実確認のみ・事後リンクのみは対象外。月次の収益ウィジェット。式は非公開、招待制、いつでも離脱可約100社(中小・ニュース以外も)。初期参加の1社は年100万ドル超、後発は数か月で5〜6万ドル、小規模サイトは数か月で1,000ドル未満(広告収益の0.1%未満)「安値」「ピーナッツ」「ブラックボックス」。支払いを断ってもAI利用は止まらない。従量支払いを強制される前のヘッジとの見方
Google News AIパイロット(商業パートナーシップ)2025/12 → 2026/10/15に400媒体超「強化コンテンツの配信と利用」への対価。Google News上の記事概要とカスタマイズ可能な音声ブリーフィングに利用Guardian・FTは年1桁百万ポンド。CNN「AI製品に関連する当社IPの配信と利用に対価を得ている」NDA+不提訴条項と報道。欧州委員会はGoogleのAIコンテンツ利用で独禁調査(2025/12)、英CMAはAI Overviewsのオプトアウト義務化(2026/6)
Microsoft Publisher Content Marketplace(PCM)試行2025/11 → 正式2026/2/4出版社が条件・価格を設定、AI開発者がグラウンディング用途でライセンス、利用量に応じて支払い。Copilotが最初の買い手、Yahooが需要側として参加共同設計:People Inc、USA Today Co、AP。Hearst・Vox・Business Insider・Condé Nast未確認。Nine(豪、2026/7)。料率・Microsoftの手数料は非公開「悲しいほど曖昧」な計測方法。People Inc CEO:「OpenAIは食べ放題、Microsoftはアラカルト。払ってくれるならどちらでも」
Perplexity Publishers' Program2024/7/30回答内でスポンサー付きフォロー質問が表示された際、引用された出版社に広告収益の「2桁%」を分配(1回答の合計上限約25%、WSJ)。Scalepostの分析ツール、API、Enterprise Pro 1年付き第1期6社、第2期15社(NewsPicks・みんかぶ含む)、Gannett、Getty。ある幹部「大きな収益源ではない」2026/2/18にPerplexityが広告を全廃し、このプログラムの支払い根拠が消滅。後継の説明なし
Perplexity Comet Plus発表2025/8/26、提供2025/10月5ドル(Pro/Maxに同梱)。収益の80%を出版社へ、20%は計算資源。初期プール4,250万ドル。配分は「人間の訪問・検索引用・エージェント操作」の3指標、重みは非公開Condé Nast、CNN、WaPo、LA Times、Fortune、Le Monde、Le Figaro。実際の支払額・加入者数は非公開。第三者推計では2,400社に薄く広がれば1社年1.8万ドル未満CNNは後に支払い契約を終了し提訴(2026/5)。Cloudflareが「身元を隠したクローラー」を告発(2025/8)。法的和平の代償という見方
Meta AI 商業データ契約2025/12〜2026/3Facebook/Instagram/WhatsApp上のMeta AIがリアルタイムのニュース質問に出典名とリンク付きで回答CNN、Fox、USA Today Co、People Inc、Le Monde、Daily Caller、Washington Examiner、News Corp(年最大5,000万ドル)、Le Figaro、Prisa、SZ「主にリスク管理」(アナリスト)。People Incの2026年Q1ライセンス収益は+26%で4,070万ドル
Amazon(Alexa+・Rufus・Nova)2025〜NYT定額、Reachは利用量ベース200社超と主張公開プログラムはなく全て個別交渉
Apple(Siri AI)交渉中、2026/8報道定額を拒否し、Siriが使ったときだけ払う。Apple News+(購読料の50%を滞在時間按分)がモデル予算1億ドル以上Appleは2023年にも5,000万ドル超の学習ライセンスをCondé Nast等に打診。成約は未確認
OpenAI2023〜約35件の二者間契約が中心。ChatGPT Pulse(2025/9、朝のブリーフィング)に出版社への支払い仕組みは開示なし2026/5/7の広告開始後、ChatGPT参照流入が一夜で+157%、ただし6割はブランド公式サイトへ。2026/10/9のGPT-6のリンク仕様変更で追跡可能な流入が−46%「ブランドが新しい一等地を得て、出版社は脚注になる」。契約しても引用は保証されない
Brave「Creator Contribution Protocol」構想、2026/7参加AIが「適格な方法で」コンテンツを使った際に認証済みクリエイターへマイクロペイメント(BAT Roadmap 4.0)AIパートナー名なし。Search APIの無料枠を2026/2に廃止(1,000クエリ5ドル)News Corp(2026/7)とフランスAPIG(2026/6)がBraveを提訴中
Anthropic—出版社とのライセンス契約は公表ゼロ(2026/8時点、Adweek「出版社は困惑」)。Wileyが初めてClaudeに直接統合された出版社15億ドルの著者集団訴訟和解2026/10/21にカナダ主要紙4社が提訴。IPO前に契約が出るとの観測
Naver「AI Briefing」(韓国)2025〜引用されたUGC(Blog・Cafe)の作成者にインセンティブ2026/1以降の引用の70%がUGC放送3社(KBS/MBC/SBS)が学習をめぐり提訴中、2026/9に弁論継続

社会評論家の見立て

買い手が計測者で審判。Google、Microsoft、Cloudflare Pay Per Use、Briaのいずれも、何回「使った」かはAI側の自己申告です。Googleの参加者が「ブラックボックス」と呼び、「Googleが自分でコンテンツの価値を決めている」と言うのは誇張ではありません。しかも支払いを断ってもAI利用は止まらない。これは市場ではなく、プラットフォームによる裁量的な配分です。

法的な「いちじくの葉」。Comet PlusはDow Jones訴訟・Condé Nastらの警告書の直後に、Googleの有料化は欧州委員会の調査と英CMAの是正措置の最中に、Metaの復帰はLlamaの性能停滞の後に出てきました。「対価」は法的・競争的圧力の関数であり、圧力が消えれば止まる(Perplexityの広告廃止でプログラムが宙に浮いたように)。

Googleはニュースキャスターも自前で作る。400媒体の記事を使って音声ブリーフィングを提供する——「ライセンス済みコンテンツで作る朝のニュース」はすでに最大のプラットフォームの製品です。中立なAIニュースの空間は、放っておけば検索独占の延長になります。

起業家の見立て

実際にお金が動くのは「買い手=プラットフォーム」のときだけ、が2026年の経験則。中立市場(2.3)は供給が集まっても需要が来ない。だからスタートアップの選択肢は3つ:(a) これらプログラムの供給側に出版社を束ねて入る、(b) 彼らが買わないロングテール(地方・非英語・専門・音声)を集約する、(c) 彼らが抱える計測の自己申告問題を解く監査・テレメトリを売る。

直接競合の名前を正確に把握する。ニュースキャスター型製品の競合は、Googleの音声ブリーフィング(400媒体、2026/10)、ChatGPT Pulse、Copilot Daily、Comet Plus、NewsGuard AI(2.12)です。差別化は「ブリーフィングの質」では勝てず、記事単位の購入レシート、配分式の公開、利用者の予算上限という「お金の見える化」で勝つしかありません。

追跡は自前で持つ。GPT-6のリンク仕様変更で参照流入の計測が一夜で壊れた以上、出版社向けレポートはプラットフォームのリファラではなく自社のサーバーサイドのレシートで組むべきです。

2.3 マーケットプレイス・仲介(中立の取引所を作る)

供給側(出版社・クリエイター)と需要側(AI企業)の間に立ち、価格発見・配信・計測・精算を担う事業者群です。クロール層(A)、学習層(B)、参照層(C)のそれぞれに専門プレイヤーがいます。

事業者層仕組み・価格決定実績(2026/10)資金・所有批判
Cloudflare Pay Per Crawl → Pay Per UseA→CPPC(2025/7/1):HTTP 402でパブリッシャー設定の定額/リクエスト、Cloudflareが販売者。Pay Per Use(2026/9/30 β):AI企業が「使用」を定義し価格を提示、出版社が受諾、使用はJSONイベントで買い手が自己申告、月次精算確認済1日10億件超の402応答。第三者推計:一般コンテンツ1回0.001〜0.005ドル、プレミアム0.05〜0.25ドル。OpenAIの検索ボットは時々払う、GPTBot・ClaudeBot・Google-Extendedはスキップ。2026/9/15から新規ドメインは学習・エージェントクローラーを既定ブロック上場。Human Native買収(2026/1)、x402 Foundation共同設立(2026/4)「クロールは価値の粗い尺度」と自認。使用量は自己申告。取り分は非公開(OMI推計約30%)。Perplexityとの「ステルスクロール」論争
TollBitAボット検知→有料サブドメインへ誘導、出版社が動的CPMを設定(例:需要で10→15ドル)、Markdownで配信。出版社の取り分100%、AI側が別途手数料約7,000サイト(2026/4)、約20%が収益化(月数百〜数万ドル)。Time、AP、Adweek。Fastly・Akamai・Imperva・Arc XP(WaPo)統合。日本参入2025/10/16(JBpress、BI.Garage)。robots.txt無視のスクレイプは3.3%→30%(2025年)累計3,100万ドル(Lightspeed)買い手のAI企業名は非公開。創業者自身「誰が海賊か分からない」
ProRata.ai(Gist.ai / Gist Answers / Gist Ads)DBill Gross。許諾コンテンツのみでRAG回答、回答を「主張」単位に分解して出典比率を算出、Gist収益の50%を寄与率で配分、前払いなし、全社同条件500〜700媒体、約100契約、News/Media Alliance加盟2,200社がオプトイン可。1億件近い記事Series B 4,000万ドル(2025/9)、累計7,500万ドル超、評価額1.3億ドル(2024/11)FIPP 2026:「意味のある収益を得ている出版社を1社も挙げられない」。式は非公開
Snowflake Cortex Knowledge ExtensionsC企業がSnowflake内で有料コンテンツにRAGクエリ、定額または従量、プリペイドクレジットで支払い。Snowflakeはコンテンツ収益を取らない17社、金融機関との「6桁ドル」契約複数Snowflake「補完であって救命具ではない」
Dow Jones FactivaC既存B2BデータベースにGenAI権8,000ソース、GenAI企業契約約20件News Corp出版社への配分条件は非公開
Bria × News/Media AllianceDBriaの帰属エンジンが出力ごとに許諾素材の寄与を算出、使用頻度で支払い、Bria・出版社50/502,200社がオプトイン可(2026/3)、金融・法務・医療の顧客Bria(累計6,500万ドル)NMA加盟社のみ、個人クリエイターは対象外
DappierC権利処理済みマーケットプレイス+RAG API、推論時の計測・収益化。エージェント向け店舗(agents.dappier.com)はx402・カード・プリペイドで匿名少額購入可Benzinga、地方TV局、ニッチメディアVC規模小、条件非公開
ScalePost / SphereB/CScalePost:市場+分析(Perplexityの分析を担当、取り分約15%)。Sphere:権利者が価格設定、「出版社100%・AIが手数料」Sphere:データセット1,000万ドル相当を登録(自称、2026/9プレシード)—初期段階
Human NativeB非構造コンテンツを学習用データセットに整備して仲介売上前。Cloudflareが2026/1/15に買収(事実上のアクハイヤー)調達356万ドル鶏と卵。手数料の多重取りで小規模出版社に残らない
Created by HumansB著者が作品を登録しライセンス条件を選択、AI開発者はモデルごとに許諾が必要。価格は「コミュニティ次第」で未確定100人超の著者(Isaacson等)、Authors Guild提携、「5分に1冊ライセンス」(自称)1,100万ドル価格未確定、需要未証明
Troveo / Protege / Calliope / Wirestock / Defined.aiB映像・音声・画像の学習用素材を権利者から直接仕入れ、ラボに販売。ブローカー手数料非公開Troveo:映像800万時間、権利者へ累計2,000万ドル超支払い(自称)。相場は1分1〜4ドル。Protege:a16z主導で3,000万ドル追加(2026/1)VC非公開映像など「希少な供給」でのみ成立
Wikimedia Enterprise / Reddit / Stack Overflow / Shutterstock / GettyB/C自社保有コンテンツの有料API。Redditは出力への中心性に連動する動的価格を模索、無料API/RSSを2026/10〜2027/3に閉鎖Reddit:ライセンス≒売上の5〜10%。Perplexity回答でのReddit引用率は20%→2%に低下—投稿者への還元なし
Redpine ConnectC権利者と契約した許諾データをAPI/MCP/CLIで提供。1,000配信トークンあたりの価格、preview(無料・ティーザー)→confirmで解錠しcost_to_unlockのみ課金、result_idsで部分購入、7日間有効・二重課金なし、request_journalで未収録媒体への需要を記録。権利者にはトークン利用量連動のレベニューシェア(率非公開)許諾トークン2,000億超、データパートナー50社超(BMJ・Sage、Chegg等)。本セッションのキーで確認できた redpine-science は1,000トークン0.5(単位はダッシュボードで要確認)シード800万ドル(2026/4、NordicNinja主導、Luminar、Node.vc)。CEO Anders Hammarbäck(Spotify/Zettle出身)日本のニュースコレクションの価格は未確認。出版社への配分率非公開
Supertab ConnectARSL準拠のAI/ボットライセンスをCDN層で。図示例は1リクエスト0.002ドル(例示)—Supertab(旧LaterPay)例示価格のみ

社会評論家の見立て

「同じゲートキーパー、新しい料金所」。Open Markets Instituteの2026年報告はこう題します。Cloudflareはウェブの20%超を前段で握り、誰が誰をブロックしているかの市場情報を独占しながら、販売者として取り分(推計30%)も得る。仲介者の手数料は15〜50%。Tier-3(地方・非英語)の出版社は市場地図に存在しません。

学習は「寄付」扱い。参照時の従量課金だけが広がると、過去にすでに学習された分は無償のまま固定されます。欧州議会が「過去利用への報酬」を求めるのはこの点です。

供給の語彙は揃い、需要の署名がない。RSLに1,500団体、TollBitに7,000サイトが並んでも、買い手の名前は出てこない。市場は片側だけでは成立しません。

起業家の見立て

成功した仲介の3条件。(i) 買い手がプラットフォーム自身(Google、Perplexity、Microsoft)、(ii) すでに調達関係がある企業顧客(Snowflakeのクレジット、Factiva)、(iii) 本当に希少な供給(未公開映像の1分1〜4ドル、Troveoの2,000万ドル)。中立の「みんなの市場」は供給だけ集めて失速しています(Human Nativeの売却、Created by Humansの価格未定、RSLのAI署名0)。

Redpineは(ii)+(iii)型。許諾済み・出典保持・トークン従量・プレビュー後に確認、という設計は「エージェントが買う」前提で作られた数少ない実装です。ハッカソンの文脈では、Redpineの上に需要側の体験(誰が、なぜ、いくらで買うか)を作ることが問われています。

価格発見の空白。「ジャーナリズムがAI企業にとっていくらの価値か、誰も知らない」(FIPP 2026)。TollBitの動的CPM、Cloudflareの買い手提示価格、Redpineのトークン単価、Yahoo!の1,000PV 124円。これらを並べた公開レートカード/価格指数はまだ存在しません。

2.4 標準・プロトコル・権利表明(お金を流すための共通語彙)

robots.txtの限界を補い、「学習は不可・検索は可・参照は有料」といった条件を機械可読にする試みです。お金そのものは流しませんが、ライセンスと計測の前提になります。2025〜26年に標準が乱立し、同時に「標準があっても署名者がいない」問題が顕在化しました。

標準推進者・時期内容採用状況(2026/10)限界
RSL(Really Simple Licensing)1.0 + RSL CollectiveEckart Walther(RSS共同開発者)、Doug Leeds。発表2025/9/10、1.0確定2025/12robots.txtのLicense:からlicense.xmlへ。用途ai-train/ai-input(RAG)/ai-index/searchを個別に許可・禁止。支払い型:クロール単位・推論単位(回答に使われたら払う)・学習実行単位・購読・帰属のみ・寄付(CCと共同)。RSL CollectiveはASCAP/BMI型の非営利集中管理団体(無料・非独占・月単位で加入脱退)支持約1,500団体(Reddit、Yahoo、Medium、Quora、People Inc、Ziff Davis、O'Reilly、BuzzFeed、USA Today Co、Vox、Wikimedia、AP等)。執行はFastly・Akamai・Cloudflareがクローラー照合。AI企業の正式参加は0社(2026/8時点)CDNなしに執行力なし。推論単位の支払いは「学習文書の寄与はネットワーク境界で観測できない」というトレーサビリティの穴。Arena Group幹部「執行参加がなければ大したことにならないかも」
IAB Tech Lab CoMP(Content Monetization Protocols)/ LLM Content Ingest APIIAB Tech Lab。WG 2025/8、v1.0公開2026/3/10、確定2026/4/28自然言語でのコンテンツ要求API、ボットが目的を申告→所有者が承認→トークン発行(監査記録)、未許諾ボットをライセンスURLへ誘導(RSL例示)、任意の市場レイヤー。クロール課金・利用課金・成果課金のいずれにも対応支持:Weather Company、People Inc、Bertelsmann。AI開発者(OpenAI、Anthropic、Gemini、Meta、Perplexity、Grok)を招待、参加は未確認「ライセンス制度でも市場でもなく、経済モデルを定義しない」と明記。標準化は数か月〜年、収益圧力は今
SPUR(Standards for Publisher Usage Rights)Content Telemetry Standard v1.0BBC・FT・Guardian・Sky News・Telegraph(2026/3設立)、NYT・Economist・AFP加入で80団体超・20か国。標準公開2026/10/2AIシステムがコンテンツを取得・グラウンディング・引用・提示・利用者が接触した各イベントを出版社へ報告する形式。マルチモーダル、C2PAと相互運用。価格は決めない。「監査・証拠化」委員会(2026/10/15)、AIライセンス諮問委員会にOpenAI・Anthropic・Google・Meta・Microsoftを招待AI企業の参加表明なしFIPP 2026で「見せかけ」「PR」との声。参加社はすでに個別契約を持つ。AI企業は「ExaやParallelのグラウンディングサービスで即座に無料クレジットが得られる」のに、ライセンスは数か月かかる
IETF aipref(AI Preferences)IETF作業部会Content-Usage: train-ai=n ヘッダー/robots.txt規則。カテゴリはtrain-aiとsearchのみ語彙草案06(2026/4)。添付方法の草案は2026/5/1に失効。これを解釈するクローラーは確認されず「まだ配備できない標準」。身元検証なし、参照・引用のカテゴリなし
Cloudflare Content Signals PolicyCloudflare、2025年後半robots.txtにContent-Signal: search / ai-input / ai-train、use=immediate|reference|fullCloudflare顧客に自動配布Cloudflareの3分類に依存
TDMRep(W3C)W3Cコミュニティグループ、最終報告v3 2024/5tdm-reservationメタタグ、/.well-known/tdmrep.json。EU DSM指令4条のオプトアウト用aipefと整合作業中。採用数不明自然言語の留保は「機械可読でない」(OLG Hamburg 2025/12)
CC SignalsCreative Commons、v0.1 2025/6Credit/Direct Contribution/Ecosystem Contribution/Open の4つの互恵要素。ライセンスではなく「信号」2026/5に非拘束の信号を断念し、大量アクセスを条件づける「条件付きアクセス」の実験的法的ツールへ転換「はい、ただし…」はラボに「いいえ」と扱われかねない。パブリックドメインは保護できない
llms.txt提案2024LLM向けMarkdown索引採用約10%。Googleは非対応。有効ファイルの97%は一度も取得されず(Ahrefs)「メニューであって鍵ではない」
Spawning ai.txt / Do Not Train / Kudurru / Source.PlusSpawning学習拒否レジストリ(2023年に7,800万作品)、ai.txt、スクレイパー検知、公開ドメイン画像1,240万件(PD12M)Stability AI・Hugging Faceが尊重。サイトはメンテナンス中(2026/7)無料のオプトアウト。対価は流れない
Web Bot Auth(IETF草案)Cloudflare等Ed25519鍵と署名(RFC 9421)でクローラーの身元を検証。/.well-known/http-message-signatures-directoryOpenAI・Google・AWSが署名(Cloudflare談)課金の前提となる「誰が来たか」の確認。普及途上
C2PA / Content CredentialsAdobe等出所証明マニフェスト。出力の来歴であって学習寄与の計測ではないBriaは全出力に付与。SPURと相互運用設計「誰の学習データが効いたか」には答えない
EU AI Act 学習データ公開要約テンプレート欧州委AI Office、2025/7/24GPAI提供者が学習コンテンツの要約を公表Google・Meta・Microsoft・OpenAI・Hugging Faceは準拠、Anthropic・Mistral・xAIは散文。罰則権限は2026/8/2から、制裁事例なし透明性のみ。対価と直結しない
Google-Agent トークンGoogle、2026/3エージェントによる取得用のrobots.txtトークン—Googleは一部エージェントがrobots.txtに従わないと示唆

社会評論家の見立て

標準は「頼み」であって「鍵」ではない。robots.txtを無視するスクレイプは2024年末の3.3%から2025年末の30%へ。語彙をいくら増やしても、読まない相手には届きません。しかも標準の乱立は、法務部門を持たない小規模出版社ほど負担になります。欧州議会が「標準の数を制限し、EUIPOを信頼できる仲介者に」と求めるのは妥当です。

SPURの本質は「AI側の自己申告を標準化する」こと。計測が買い手側にある構造そのものは変えません。AI企業が参加を表明しない限り、出版社が自分たちで作った報告書の様式に過ぎない。

起業家の見立て

「標準の最初の買い手」になることは、それ自体が差別化。RSLに準拠してai-inputの推論単位課金を実際に支払い、SPUR形式でテレメトリを出版社に返す製品は、まだ存在しません。審査員にも出版社にも刺さる物語です。

相互運用シム。出版社は1つの権利ファイルを書けば、RSL・Content-Signal・aipref・CC Signals・CoMPトークンの全語彙に変換される。クローラーは1つのライブラリで全部を尊重する。地味ですが未着手です。

署名付きテレメトリ+サンプリング監査。Web Bot Authの鍵でAI側がイベントに署名し、出版社側が自分の402/200ログと突合して抜き打ち検証できれば、「自己申告」問題を部分的に解けます。

2.5 決済レール(エージェントが払うためのインフラ)

「人が記事ごとに財布を開く」のではなく「エージェントがHTTPの402応答に機械的に支払う」ための決済基盤です。2025〜26年に急速に整備されましたが、実需(コンテンツ購入)はまだ小さいのが実態です。

レール仕組み実績批判・限界
x402(Coinbase → x402 Foundation、Linux Foundation傘下 2026/4)HTTP 402→価格と支払い方法→ステーブルコイン(USDC on Base、Solana、Stellar)で支払い→証明を付けて再要求。アカウント・APIキー不要。Coinbaseのファシリテーターが検証初年度1.69億件の決済、買い手59万、売り手10万(Coinbase)。ただし実商取引は1日約2.8万ドル、約半分はゲーム的取引(CoinDesk)。メンバー:Coinbase、Cloudflare、Stripe、AWS、Google、Visa、Circle、Anthropic、Solana税務・インボイス・請求書が未解決。Coinbaseのファシリテーター依存。ボットと人間を区別しない。「無料のエンドポイントがあるのになぜ払うのか」。コンテンツ用途はごく少数
Cloudflare Monetization Gateway(限定β、米国)リクエスト・クエリ・トークン単位の課金をx402で。Agents SDK/MCPでx402対応、事前交渉ライセンス向けの「後払い」方式も—β、米国のみ
AWS CloudFront / WAF Bot Control「Monetize」(2026/6 GA)エッジでパスを有料化、x402でUSDC精算価格は販売者設定、取引量非公開—
L402(Lightning Labs、bLIP-0026)402+macaroon資格証明+BOLT11インボイス→プリイメージで検証。委任・減衰可能な資格証明(サブエージェントに500satの上限など)。Lightning Agent Tools(2026/3、Claude Code/Codex向け)Aperture/Loopで5年稼働、Fewsats等のエコシステム。取引量の公表なしBitcoin限定、提案段階
Stripe Agentic Commerce「エージェントからの支払いを受け入れる」、Shared Payment Tokens/OpenAIとのACP、トークン課金—商取引(買い物)が主眼
Visa Trusted Agent Protocol / Mastercard Agent Pay / Google AP2エージェント商取引の決済レール。Visaはx402 Foundationに関与—コンテンツ決済での実装例は確認できず
Story Protocol → DATA FoundationプログラマブルIPライセンス(PIL)、Agent TCP/IP。2026/6/25にリブランド、$IP→$DATA、AI学習データの来歴(Trace)と決済(Poseidon、a16zインキュベート)へ軸足移動調達約1.34億ドル(a16z)。トークン価格は2025/9の14.78ドルをピークに停滞CEO自身が「創作IPの権利者はライセンスのトークン化に抵抗した」と認める。「クリエイター向けプログラマブルIP」の構想は事実上放棄
Nevermined / Skyfire / Vana / Ocean Protocolエージェント決済の計測・成果課金/エージェント財布・KYA/データDAO/データ市場宣伝的な統計のみジャーナリズムへの支払い事例は見当たらず未確認
Dappier エージェント店舗x402・「mpp」・カード・プリペイドで、登録なしの少額クレジットからニュース・検索をクエリ単位で購入初のニュース特化エージェント店舗規模小
Redpine preview→confirm無料プレビュー→利用者(または利用者が上限を与えたエージェント)が承認→解錠分だけ課金。idempotent、7日間再確認可本ハッカソンの基盤決済はRedpineの残高(クレジット)経由で、402/x402のような公開プロトコルではない

社会評論家の見立て

レールは供給過剰、需要不足。1.69億件の決済の裏で実商取引は1日2.8万ドル。Web3が約束した「プログラマブルIPでクリエイターに自動分配」は、肝心の権利者に拒まれてデータ来歴事業へ転身しました。決済技術が「払いたくない」という意思を変えることはありません。

退屈な配管が未解決。数百万件のマイクロイベントを月次明細に集約し、消費税・VAT・インボイスに適合させる仕組みは誰も作っていない。これがないと、中小出版社にとって受け取った「対価」は会計上の厄介ごとになります。

起業家の見立て

Szaboの条件を満たす設計が本命。Nick Szabo(1999)は、利用者が「上限付き予算」か「定額」で委任するときにだけ代理購買が成立すると論じました。preview→上限内で自動confirm→月次レシートはこの条件そのものです。

MCPネイティブな402フロー。エージェントが「この記事を¥Xで解錠しますか?」と尋ね、許諾をレシートとして引用に添付する——Redpine型を一般化したプロトコル層は未着手です。

日本固有の差別化はインボイス。適格請求書発行・消費税区分・月次集約精算をレールの上に載せた瞬間、国内の出版社にとって「使える対価」になります。

2.6 帰属・計測技術(どの作品がどれだけ効いたかを測る)

「適切な対価」を定義するには、使用量を測る単位が必要です。研究と商用製品の全ては、次のスペクトラム上に位置づけられます。

学習時帰属(研究)Data Shapley、影響関数、TRAK、AbU。1クエリに数分〜数時間。順位は出せるが量は不確か
学習時帰属(商用)Sureel、Musical AI、Bria、Soundverse。学習の最初から組み込みが必須。式は全社非公開
プール比例配分Shutterstock、LANDR、STIMの学習分。計測せず「量」で割る
引用の有無Perplexity広告分配、Google貢献パイロット。二値的で引用詰め込みに弱い
検索時の寄与率ContextCite(MIT)、Anthropic Citations、ProRataの主張単位%。候補が既知で安価・正確
← 難しい・近似・ゲーム可能・学習に介入が必要解ける・ほぼ正確・安価・監査可能 →

商用の帰属システム

システム対象仕組み(公開情報)規模・資金限界
ProRata.aiテキスト(RAG)取り込み時に「事実主張レベル」までベクトル指紋化。回答をLLMで主張に分解し、パートナー文書と照合して相対寄与を算出(例「Atlantic 50%・Time 50%」)。収益の50%を寄与率で月次配分。「入力への支払い(学習一時金)」と「出力への支払い(使用ロイヤルティ)」を区別500媒体超、累計7,500万ドル。特許は「出願中」式・検証・紛争処理の公開なし。閉じたコーパスのRAGなので学習時の利用には無関係
Sureel AI(Warner Music Groupが2026/6/10に買収)音楽、NIL「AI DNA」。学習中に各データ点がネットワークに与えた影響を追跡し「静的帰属ベクトル」として出力ごとの影響%を推定。作曲(出版)と録音(原盤)の影響を分離。動的ライセンスAPI、Do-Not-Trainレジストリ登録資産約1,000万件、STIMの集団ライセンスの必須帰属プロバイダー、Symphonicと提携(2026/7)精度の公開検証なし。Sureelなしで学習したモデル(Suno/Udio等)には無力
Musical AI音楽生成ごとに各IPの影響%を列挙する「ロイヤルティシート」。学習の最初から組み込み。原盤と出版を一括保有する「ワンストップ」権利者に限定。Beatoven.aiとの契約で新モデル収益の30%を権利者へ約300万楽曲、プレシード約150万ドル30%は測定ではなく交渉の産物。ワンストップ限定で大半のカタログを排除
Bria AI画像(→音楽・映像・テキストへ拡張計画)許諾データのみで学習した視覚モデル(Fibo系)。生成ごとに各学習画像の相対重みを示す帰属ベクトル(50ms未満)。出力にC2PA、補償付き。News/Media Allianceと50/50データパートナー30社超(Getty、Envato、Alamy、Freepik)、累計6,500万ドル式・率・支払額を一度も公表していない
Vermillio TraceID肖像・IPAI生成物を追跡し元IPへ遡及、権利者が条件設定、NILライセンス(WME提携)。実態は検知・指紋+権利管理Sony Music主導で1,600万ドル(2025/3)学習寄与の計測ではない
Soundverse / Lemonaide / LANDR音楽Soundverse:学習・生成時のトークンフロー追跡(「精度はアーキテクチャ次第」と自認)。Lemonaide:単一プロデューサーモデル→100%帰属、100万再生超で5%。LANDR Fair Trade AI:収益の20%を曲数比例で(粒度の高い帰属は明示的に放棄)——
Deezer AI検知音楽(検知)生成器固有の非可聴アーティファクトを検出、モデル名まで特定。精度99.8%。AI曲はアルゴリズム推薦から除外、不正ストリームはロイヤルティプールから除外。2026/1から外販(SACEMがテスト、Billboardが利用)日次9万曲(2026/7)、2025年に1,340万曲タグ付け「AIか否か」の判定であって「誰の作品が効いたか」ではない
Audible Magic / Pex / YouTube Content ID / 肖像検知音声・映像(検知)録音の再利用を指紋で検出。UMG・SonyはAudible MagicでSunoの学習セット全体を指紋照合し「数百万曲」を特定(2025/11〜2026/1)—類似の検出であって寄与の測定ではない。訴訟の証拠インフラとしては強力

学術研究:学習データ帰属(TDA)とロイヤルティ理論

研究手法示したこと支払いへの含意
影響関数(Koh & Liang 2017)/Data Shapley(Ghorbani & Zou 2019)Leave-one-outの二次近似/シャープレイ値のモンテカルロ近似小規模・凸では機能。公理的「公平性」深層モデルでは不安定、LLM規模では再学習が指数的で不可能
TRAK(Park et al. 2023)/JourneyTRAK/AbC(2023)勾配のランダム射影+線形化、約20モデルCLIP・ImageNet規模へ拡張10万画像で1クエリ約3.8分・290GB
AbU:生成画像をアンラーニングして帰属(NeurIPS 2024)/高速版(2025)生成画像の損失を上げる方向に部分的にアンラーニングし、学習画像の損失増で採点。高速版はDINO+CLIP埋め込みへ蒸留既存手法を上回る。高速版は1クエリ18.7ms。「補償モデルへの情報提供」が動機と明記高速版は順位のみで量は出ない。Stable Diffusion規模での検証不能
In-Run Data Shapley(Wang, Mittal, Song, Jia 2024)1回の学習実行中に勾配更新ごとのシャープレイ値を計算The Pileの約16%は負の価値。貢献は記憶(memorization)をはるかに超えて広がる「出力が原作に似ていなくても、ロイヤルティに値するデータ提供者がいる」。ただし実際の学習に介入が必要
「生成AIの著作権課題への経済学的解決」(Wang, Deng, Chiba-Okabe, Barak, Su 2024)連合Sの効用=log p_S(x)/p_∅(x)(パブリックドメインのみの基準に対して追加されたビット数)。データ所有者単位のシャープレイ値を正規化してロイヤルティ比率に画風の関連性を追跡。不在ブランドのロゴには均等配分。重複データではLeave-one-outが0に崩れるがシャープレイは耐える所有者数で計算量が増え「少数の大口所有者向け」。データを分割・複製すれば取り分を水増しできる
「Computational Copyright:音楽生成AIのロイヤルティモデル」(Deng et al. 2023–25)「Generative Content ID」、TRAK系のTDAで因果帰属を近似TDAは再学習ベースの帰属を忠実に近似。知覚的類似は最も影響の強いサンプルしか捉えず、効用を生む広い貢献を見逃す→類似度はロイヤルティの基準として不適Content ID型(類似ベース)の業界慣行への根本的な異議
Copyright-Aware Incentive Scheme(Sony AI等 2024)支払い=λ×D-TRAK寄与−δ×著作権損失(類似度)、階層強化学習で予算配分8権利者・50〜200画像の小規模シミュレーション重みは手動、重複は二重払い
データ帰属への敵対的攻撃(Wang, Deng, Hu, Ma 2024)シャドウ攻撃/外れ値攻撃約1%のデータを持つ提供者が上位帰属シェアを200〜650%(最大約800%)水増し可能。ランダムノイズは無効、データ拡張も防御にならない帰属ベースの支払いは、堅牢化しない限り構造的にゲーム可能
証拠としての「使用の証明」:Copyright Traps(2024)、データ透かし(USC 2024)、Min-K%・Dataset Inference、DE-COP(O'Reilly書籍:GPT-4oが有料テキストでAUROC 0.82)公開前に架空文を埋め込む/統計的検定/多肢選択の記憶検査「使ったか否か」は一定条件で検出可能。GEMA対OpenAI判決(2025/11)は逐語出力を「パラメータへの固定」の証拠と扱った「どれだけ効いたか」は測れない。事前埋め込みが必要で遡及不可。訴訟インフラとしては有用
ContextCite(MIT、NeurIPS 2024)/Anthropic Citations API(2025/1)文脈を文単位に分け約32回のランダム除去で生成確率の変化を測り、Lassoで寄与重みを推定。Citations APIは引用文の文字位置を返す「実際に使った(contributive)」と「裏付けになる(corroborative)」を区別。モデル非依存・安価・オープンソースRAGなら帰属は技術的に解ける。問題は商用製品がそれをせず、不正確な二値引用しか出していないこと(Tow Center:60%超が誤り、Pew:要約内リンクのクリック1%)
Data Provenance Initiative(Longpre et al.)「Consent in Crisis」(2024)1,800以上のデータセット監査、robots.txt・利用規約の1年追跡微調整データセットの70%超にライセンス情報なし。1年で上位ドメインのトークンの20〜33%が制限。自由に使えるコモンズはニュースとフォーラムで最速に縮小クリエイターの「3C(同意・クレジット・補償)」と普遍的来歴標準を提唱

社会評論家の見立て

「貢献」と「類似」は別物であり、価値の大半は記憶されない部分にある。In-Run Shapleyは、出力が似ていなくても学習に効いたデータが広く存在することを示し、Deng らは類似度ベースのContent ID方式を「ロイヤルティの基準として不適」と断じます。つまり、現行の裁判(逐語出力を争う)も業界慣行(指紋照合)も、価値の作られ方とずれています。

帰属は技術問題であると同時に信頼問題。全ベンダーが式を非公開にし、独立検証がなく、1%の提供者が取り分を8倍にできる。Water & Musicの言う通り「帰属はビジネス・倫理・信頼の問題」です。STIMが学習分を「作品数で均等割」にし、帰属は出力分だけに使うのは、この限界への現実的な対応です。

起業家の見立て

学習時帰属には手を出さない。研究者と大手レーベルの領域で、しかも学習への介入が前提です。検索時帰属で「正しい」ものを出荷する——候補はあなたが取得した許諾コーパス、寄与率はContextCite型の除去実験かCitations APIの文字位置で計算でき、回答ごとの収益を寄与率で分け、全配分を監査台帳に記録し、C2PA/URLハッシュで来歴を付ける。

設計原則。(1) 引用回数ではなく寄与率×回答収益で払う(引用詰め込み対策)、(2) ロングテール向けに均等割の「在庫プール」を別に持つ(STIM/LANDR型)、(3) 式を公開する、(4) 作品単位のオプトインと撤回を認める(STIM 2026/6型)、(5) 使用の証明ツールは監査機能として持ち、支払い入力にはしない、(6) 1回答あたりの金額は極小なので、UIは月次の集計明細を見せる。

2.7 集中管理・集団ライセンス(権利者が束になって売る)

音楽のJASRAC/ASCAP型の仕組みをAI向けに転用する動きです。欧州の音楽業界が先行し、ニュース・書籍でも団体経由のオプトイン型が現れました。日本の集中管理団体は「断る権利」を優先し、AI学習ライセンスには踏み込んでいません。

団体・枠組み時期内容状態・批判
STIM(スウェーデン)世界初の集団AIライセンス2025/9学習と出力の2収益源。初ライセンシーはSongfox。Sureelの帰属技術組み込みが必須(月次の帰属報告)。学習分の配分は作品ごとに均等(再生数加重ではない)、出力分は帰属に従う、帰属が不確かなら学習データ使用量にフォールバック。モデルのバージョンごとにライセンス。2026/6/1から全会員に「AI権利カテゴリー」:作品ごとのオプトイン、自動承認なし、撤回は将来分のみ料金・分配率は非公開、支払い実例なし。対照的にTeosto(フィンランド)は既定で留保(オプトアウト)。「STIMは参加を行為にし、Teostoは離脱を行為にする」
GEMA(ドイツ)二本柱モデル2024/9〜柱1:ドイツで活動するAI提供者向けに事前学習・微調整と出力をカバー、生成システムの純収益の30%+収益が低い場合は出力量連動の最低料金。柱2:AI音楽の下流利用は人間の音楽と同額以上。「PLAI by GEMA」(2026/7)未確認KI Bundesverband(AI業界団体)は「30%はドイツでの学習・生成を魅力のないものにする」と批判し、代わりにZPÜ(私的複製補償金)型の定額課徴金を提案。GEMAはOpenAI(2025/11/11)・Suno(2026/7/31)に連勝し、裁判所は事実上ライセンス取得を命じた(2.10)
SACEM(仏)/Koda(デンマーク)/PRS(英)2023〜SACEMは2023/10に一括TDMオプトアウト、Deezer検知をテスト。KodaはSunoを提訴。PRS/UK Musicは「Make It Fair」でオプトアウト案に反対公開のAIライセンス条件はなし
CCC(米Copyright Clearance Center)2025〜2026/3Annual Copyright Licenseに内部AI権、外部利用向けのAI Systems Training License、学術向けAI権、「要約から始める」AI取引型の従量ライセンス(2026/3)採用規模非公開。学協会・中小出版社向けの集団ライセンスは「規模で成立したものはない」(CASRAI 2026/7)
CLA(英)生成AI学習ライセンス/Copyright Agency(豪)2026CLA:PLS/CLA/ALCS経由のオプトイン集団ライセンス(第1段階2026年初)。Copyright Agency:ニュースのプロンプト利用を事業ライセンスに追加(2025/5)、AIライセンス(RAG・微調整・学習)を会員協議中(2026/3)非公開
RSL Collective2025/9〜ASCAP/BMI型の非営利。無料・非独占・月単位加入脱退。ロイヤルティの%を手数料として取る計画、最低額あり。経済学者を雇用、「1,000億ドルの機会」と主張AI企業の署名ゼロ(2.4)
News/Media Alliance(米、2,200社)2025/3〜2026/3ProRataと枠組み契約(収益50%)、Briaと利用量連動契約、加盟14社でCohereを提訴(却下申立ては棄却、2025/11)加盟社限定。個人ジャーナリストは対象外
Authors Guild / Created by Humans2024〜著者がAI学習権を留保するモデル条項、オプトイン型ライセンス市場。Bartz和解の請求手続きを主導(作品の99.5%に到達)価格未確定、需要未証明
Dataset Providers Alliance(DPA)2024〜Rightsify、vAIsual、Pixta、Datarade、Calliope等。立場表明(2024/9):オプトインを既定、購読・従量・成果連動の対価、立法支持業界団体。市場そのものではない
SAG-AFTRA / WGA(労働協約という経路)2023〜2025SAG-AFTRA 2023年TV/映画協約:デジタル複製の作成に1日分、使用に「本人が働いたはずの日数分」+残余報酬、他作品での使用は都度同意+交渉。ゲーム協約(2025/7)、CM協約(2025)。WGA:AIは脚本を書けず「原作素材」にもならないEFFは著作権拡張よりこの労働法ルートを推奨。「デジタル複製」の対価が最も精緻に文書化された例
Human Artistry Campaign2023〜190団体超。7原則(学習含むライセンスと市場価格の補償、AI特例の否定、来歴・表示)NO FAKES法を支持
日本:JASRAC・JRRC・JCOPY・JAC・NexTone2026/6JASRACは2026/6/11に30条の4改正と「断る権利」を公式要求(クリエイター調査:反対54%・賛成20%)。AI学習ライセンスには踏み込まず。他団体のAI包括許諾は確認できず未確認欧州と対照的に「許諾の仕組みを作る前に拒否権を確保する」路線
日本:日本俳優連合「音声に関する生成AI利用ガイドライン」2026/10/15全6部22条。学習・モデル化・作品利用の各段階で書面同意、同意は原則1年・包括買取無効、対価4類型(学習料・生成AI使用料・追加使用料・多言語化使用料)、故人の声は原則禁止、開示拒否で無断利用推定日本で権利者側が先に「料率体系の雛形」を出した唯一の領域

社会評論家の見立て

集中管理は取引コストを下げるが、配分はブラックボックスになりがち。STIMもGEMAも料率を公表せず、支払い実例もまだない。米国には新聞のCMOが存在せず、独禁法が壁になる。そして「レーベルに届いた金」と「演奏者に届く金」は別で、米国音楽家連盟(AFM)はUMG・WMGをAI収益の未分配で提訴したと報じられています(2026/6、未確認)。

日本の「断る権利」優先は、対価の仕組みづくりを遅らせる。JASRACの立場は正当ですが、欧州がライセンス実務を積み上げる間、日本には学習ライセンスの実例が生まれません。

起業家の見立て

日本の「JASRAC型AIライセンス」は空白。集団化のための計測・分配エンジン(誰のコンテンツが何回参照され、いくら払うか)を誰も持っていません。文化庁の有償データセット実証(2.13)と接続すれば、公的な追い風もあります。

料率の雛形は音声にある。日俳連の4類型(学習料・生成使用料・追加使用料・多言語化使用料)は、ニュース音声・ポッドキャスト(News Connect)にそのまま転用できる構造です。

最惠国待遇(MFN)と公開式は独立系から出る。音楽でも透明な式はKobalt(MFN)とSAG-AFTRAから出ました。ニュースでも最初の公開式は大手ではなく、集団か独立系連合から出るはずです。

2.8 プール型・比例配分の「式」(実際に支払われている計算式の一覧)

以下は、公開情報で「どの単位で、どの比率で、誰が価格を決めているか」まで分かる支払いスキームです。ニュースへの転用可能性を考えるための実データとして並べます。

#スキーム(分野)計測単位率・分配価格決定者開示状況
1SAG-AFTRA 2023 TV/映画協約 デジタル複製(映像)作成:作業日数。使用:「本人が働いたはずの製作日数」作成に1日分の日割り給与、使用は日割りか最低額の高い方×相当日数、残余報酬あり、他作品使用は日雇い最低額以上団体交渉(組合/AMPTP)、個別交渉で上乗せ全文公開
2ElevenLabs Eleven Music(音楽、Merlin・Kobalt、2025/8)プール収益のシェアプールを原盤50/出版50で分割、各権利者は学習に使った作品数比例で配信人気度で加重、Kobaltに最惠国待遇二者交渉分配構造は公開、料率非公開。唯一「式」が公開された音楽契約
3Musical AI × Beatoven「Maestro」(音楽)出力ごとの帰属%生成収益の30%を帰属で配分プラットフォーム%公開
4LANDR Fair Trade AI(音楽)曲数比例AI製品収益の20%プラットフォーム公開
5Lemonaide(音楽)単一プロデューサーモデル100万再生超のトラックで5%をプロデューサーへプラットフォーム公開
6STIM集団AIライセンス(音楽)(a) モデルバージョンごとの学習料 (b) 利用・生成収益シェア学習料は作品数・開発者規模等で配分(均等割)、出力分は帰属CMO(料率表型)、オプトイン料率非公開
7GEMA二本柱(音楽、提案)純収益・出力量純収益の30%+出力量連動の最低料金CMO公開(提案)
8Suno(WMG・BMG・Believe)(音楽、2026/9〜)購読・DL収益のシェア率非公開。消費者側:Pro 10ドル/20DL、Premier 30ドル/60DL、追加DL 2.99ドル二者交渉、レーベルが下流に分配非公開
9UMG–Udio(音楽)ダウンロード不可の「壁付き庭」の購読収益、出力ごとの帰属スコア1生成0.002〜0.005ドル未確認・情報源の信頼性低二者交渉非公開
10Spotify AIカバー/リミックス追加プラン(UMG・Merlin・Kobalt・Believe、2026)リミックスの再生+有料追加プラン収益元の権利者にリミックス再生のロイヤルティ、「既存ロイヤルティに上乗せ」Spotify×権利者、オプトイン価格未定、研究プレビュー前
11Deezer(音楽、負の仕組み)不正/AIタグ付きストリーム非収益化、推薦除外。プロアーティストのストリームは2倍加重(artist-centric)プラットフォーム公開
12Shutterstock Contributor Fund(画像)許諾データセットへの収録+AI生成ライセンス収益データ契約額をコンテンツ量比例で配分。調査では中央値1画像0.0069ドルプラットフォーム式非公開
13Getty Generative AI(画像)学習セット内のファイル比率+ライセンス実績非公開の経常シェアプラットフォーム非公開
14Adobe Firefly Contributor Bonus(画像、2023〜2026/9の第4回)学習対象の承認画像数×直近12か月のライセンス数裁量、最低支払い1ドルに引き下げプラットフォーム、年1回非公開、「ペニー」批判
15Canva Creator Compensation(デザイン素材、2023)オプトインクリエイターの利用量3年で2億ドルのプールプラットフォーム式非公開
16Bria(画像)生成ごとの帰属ベクトル「実使用で支払い」、%非公開プラットフォーム×データパートナー非公開
17映像ブローカー(Troveo/Calliope/Protege)映像の時間、解像度・独占性売り手に1分1〜4ドル報道買い手主導非公開
18Adobe Firefly Video 素材調達クリップの分1分2.62〜7.25ドル(Bloomberg 2024)報道買い手—
19ElevenLabs Voice Library(声)その声で生成された文字数1,000文字ごとの支払い、現金かクレジット。2024/10に累計100万ドル、2026年に約1,100万ドル未確認プラットフォームのレートカード、所有者が階層選択部分公開
20ElevenLabs Iconic Marketplace / SAG-AFTRA–Narrativ(声)案件単位権利者と直接交渉。Narrativは俳優が組合最低額以上で自ら価格設定権利者非公開
21Perplexity Comet Plus(ニュース)訪問・引用・エージェント操作収益の80%、重み非公開プラットフォーム支払額非公開
22ProRata Gist / NewsGuard AI(ニュース)回答内の寄与率/引用収益の50%プラットフォーム式非公開
23Google Offerwall(ウェブ)リワード広告/Supertab少額課金広告は出版社70%、Supertabは通常80%Google公開
24Apple News+ / Scroll(ニュース束ね売り)滞在時間/エンゲージメントApple:購読料の50%を出版社で時間按分報道。Scroll:約70%プラットフォーム—
25Blendle(ニュース少額課金、歴史)記事0.09〜1.99ユーロ(典型0.25)、Blendleが30%出版社公開
26Yahoo!ニュース等への配信許諾料(日本)PV1,000PVあたり平均124円(最大251円・最小49円)ポータル公取委2023年報告で判明。算定基準不明との不満7割
27Bartz v. Anthropic和解(書籍)作品1作品約3,000ドル、著者/出版社50/50裁判所承認公開
28HarperCollins–Microsoft(書籍)タイトル5,000ドル/3年、著者50%二者交渉、著者オプトイン公開
29フランス隣接権:Le Monde / AFP(ニュース)AI契約収益/記者Le Monde:25%を記者へ(上限なし)。AFP:記者1人年275ユーロ労使協定公開
30NO FAKES法案(肖像、米・審議中)作品・送信法定損害賠償5,000〜25,000ドル/作品、上限75万ドル法律法案

社会評論家の見立て

「ペニー問題」。1画像0.0078ドル、Googleの小規模サイト1,000ドル未満、Comet Plusを2,400社で割れば1社年1.8万ドル未満。粒度の高い配分は「経済的に無意味な金額への断片化」を招きます。人気加重(ElevenLabs)はニッチや地方を不利にし、滞在時間按分(Apple News+)は長文誌を優遇しゲームされました(Scroll)。

透明な式は独立系・労働側から出た。SAG-AFTRAの「相当日数」、Kobaltの50/50+MFN、LANDRの20%、Le Mondeの25%。大手の二者契約は一つも式を出していません。公平さは交渉力の弱い側が要求して初めて文書になります。

起業家の見立て

業界の収斂点は「二段構え」。固定の「在庫/可用性プール」(均等割、ロングテール保護)+従量の「寄与プール」(帰属連動)。STIM、ElevenLabs、Googleの2プログラムがそれぞれ別の形でこの構造に近づいています。ニュースでも、記事を登録してくれた出版社への均等割と、実際に読まれた記事への従量払いを分けるのが筋です。

MFNで小規模を大手条件に乗せる。「最大手が得た条件を全参加者に自動適用」は、集団化の最強のインセンティブです。

日本の比較軸は0.12円/PV。公取委が「算定基準の不透明さ」を最大の問題と認定している以上、トークン・引用回数・寄与率という可監査な単位での自動分配は、規制当局の問題意識と一致します。

2.9 法制度と政策提案(国別のデフォルトルールと方向性)

「払わなければならないのか」は国によって答えが違います。以下は2026年10月時点の各国のデフォルトルールと方向性、続いて世界で提案されている制度モデルの比較です。日本の詳細は2.13に分けました。

法域学習の既定ルール出力・RAGのルール2026年の方向性・主要イベント
米国適法入手した著作物の学習はフェアユースの公算大(Bartz 2025/6、Kadrey 2025/6)。海賊版入手は別。非生成AI(Ross)は否定。司法省が2026/9/2にOpenAI訴訟で「学習は高度に変容的なフェアユース」と意見書、「市場希釈」論を否定代替的な要約は侵害たり得る(Cohere事件、2025/11却下申立て棄却)。DMCA 1201/1202が生きる「学習ではなく、入手と出力に払え」へ。第3巡回区がThomson Reuters v. Ross を2026/9/29に維持(AI学習データのライセンス市場が「急速に発展中」と認定、ただし生成AIは区別)。In re OpenAI(NYT等)のフェアユース略式判決の交互申立てが2026/9/4、反論期限11/6、公判日未定。Penske・Chegg対Googleの独禁訴訟は2026/9/30に却下(「期待は合意ではない」「議会か規制当局の仕事」)。著作権局Part 3(2025/5)は強制許諾・ECLに「支持少ない」、市場の発展を待つ。法案:TRAIN Act、NO FAKES(上院司法委2026/6/18可決)、COPIED、Hawley/Blumenthal法案、いずれも未成立。州:テネシーELVIS法、カリフォルニアAB 2013(学習データ透明性、2026/1施行)、SB 942(2026/8)。大統領令14365(2025/12)で州法に挑戦。Perlmutter登録官は最高裁の執行停止却下(2026/6/30)で在職
EUDSM指令4条:機械可読オプトアウトがなければ商用TDM可。ただし記憶(memorization)は複製でありTDM例外の外(GEMA v OpenAI)。AI法53条:GPAIは著作権方針と学習データ要約を公表、執行権限は2026/8/2から(最大売上3%/1,500万ユーロ)、制裁事例なし複製・公衆送信。報道出版者の権利(15条)がCJEUに係属(Like Company v Google、C-250/25、大法廷弁論2026/3/10、判決2027年見込み)報酬権へ。欧州議会がVoss報告を2026/3/10に460–71–88で採択:集中管理を主とする公正な報酬(過去の収集分を含む)、透明性義務を怠れば使用の反証可能な推定、EUIPOを中央オプトアウト登録機関に、報道にはRAG・推論への明示同意。欧州委は2026/9/29に協議開始(11/3まで):標準化オプトアウト、中央登録、クローラー開示、使用推定、ライセンス市場、集団ライセンス・公正補償を選択肢に。GPAI行動規範(2025/7)の著作権章にMetaは不署名。OLG Hamburg(LAION、2025/12):自然言語の留保は機械可読でない
ドイツEUと同じ。裁判所は作品が記憶されていればライセンス必要侵害GEMA v OpenAI(2025/11/11)、GEMA v Suno(2026/7/31、米国での学習にもドイツの管轄を認定)、いずれも控訴中
英国商用TDM例外なし→英国内の学習はライセンス必要(海外で学習したモデルには届きにくい:Getty事件)未判断2024/12協議の「オプトアウト付きTDM例外」案は支持3%(「全てライセンス」88%)。政府報告(2026/3/18)は現状維持、「市場主導のライセンス」、証拠収集へ(「先送りの模範」と評される)。貴族院委員会(2026/3/6)は「ライセンス優先+透明性義務化」。Getty v Stability控訴審は2026/11初旬。CMAはGoogleに戦略的市場地位を指定(2025/10)、AI Overviewsのオプトアウトを義務化(2026/6)
インドデリー高裁(ANI v OpenAI、2026/7/24):学習・保存は一応フェアディーリング、仮差止め却下(ANIは750万ドルのライセンスを提示していた)RAG・出力は個別判断政策は逆方向:DPIIT作業部会「One Nation, One License, One Payment」(2025/12)=オプトアウトなしの強制包括ライセンス、商用化後に収益連動の法定ロイヤルティ、政府指定の非営利CRCATが徴収・分配、登録作品のみ支払い。協議2026/2/6締切、政府回答はH2 2026。Nasscomは反対(TDM例外+機械可読オプトアウトを要求)、SFLC.inは「選択権がなく収益連動は微々たる額」
中国学習には寛容(「公正利用たり得る」)、出力に厳格直接・寄与侵害、賠償は少額(ウルトラマン事件:1万元・3万元)AI生成コンテンツ表示義務(2025/9)。学習補償制度なし
韓国例外なし、ガイドラインはライセンス推奨—AI基本法(2026/1/22施行)は著作権・報酬に無言。放送3社v Naver係属
カナダTDM例外なし→ライセンス—オンタリオ高裁がOpenAIへの管轄を認定(2025/11)、控訴中。主要紙がAnthropicを提訴(2026/10/21)。Online News Act(Google年1億カナダドル)はAI企業を対象外
オーストラリアTDM例外なし(政府が2025/10/26に導入を否定)→ライセンス—著作権・AI参照グループ(CAIRG)が継続。News Bargaining Incentive(大手PFへの課金を契約で相殺)の立法状況は不明
ブラジルPL 2338/2023:上院可決(2024/12)に学習利用への報酬権+オプトアウト+研究例外—下院審議中、2026年の状況不明。Folha v OpenAIは2026/5に和解→ライセンス
シンガポール/香港/スイスシンガポール:計算データ解析例外(商用可、オプトアウトなし)。香港:オプトアウト付きTDM例外を提案。スイス:AI固有ルールなし—安定/不明
日本著作権法30条の4:享受目的でなければ学習は無許諾で可(営利・非営利・国内外を問わない)。「不当に害する」場合のただし書。改正なし(2026/6時点)47条の5(軽微利用)が主戦場。読売・朝日・日経v Perplexity係属法改正ではなくソフトロー(プリンシプル・コード2026/8)・契約(文化庁の有償データ実証)・競争法(公取委のAI検索調査)で対応。詳細は2.13

世界で提案されている制度モデルの比較

モデル仕組み長所短所採用・支持
任意の直接ライセンス二者契約、交渉で価格価格発見、柔軟、すでに動いている大手にしか届かない、秘密、「反競争的黙従」で参入障壁化(Lemley & Noti-Victor)、ロングテール不在米著作権局(市場を待つ)、英政府(現状維持+作業部会)、音楽メジャーの2025–26年契約
任意の集団ライセンスCMOがレパートリーをライセンス、会員はオプトイン取引コスト削減、監査可能、既存CMOを使える、欧州議会が支持米国では独禁法上の懸念、CMOのレパートリーと帰属技術を組み込んだモデルしか対象にならない、料率非公開、支払いの断片化STIM、GEMA、欧州議会。米著作権局は義務化に「支持少ない」
拡大集中許諾(ECL)CMOのライセンスが非会員にも及ぶ(オプトアウト可)ロングテール・孤児著作物をカバー、北欧の先例米国に伝統なし、代表性の争い、料率設定の政治北欧(原則)、米著作権局は特定分野での市場失敗時の予備策、英貴族院はCMO経由で個人へ
強制/法定ライセンス法律で利用を許容、オプトアウトなし、料率は式か審判所開発者の法的確実性、全作品をカバー、低取引コストクリエイターの拒否権喪失(FOSSとの衝突)、収益連動では微額、登録負担、中小開発者に不利インド(提案)、欧州議会調査(Lucchi:CMO経由の法定報酬+AI Officeの監査)、欧州議会決議(過去利用への報酬)
デプロイ時の課徴金(levy)商用AIサービスの収益(または計算・出力)に課金、使用追跡なし価値が現れる場所に義務を置く、不可能な取引単位の透明性を回避、コモンズ・公共モデルの財源にも実使用との結びつき弱い、配分の政治、無断利用の正当化、仲介者に捕捉(EFF「いじめっ子に取られる昼食代」)Open Future(Keller)、Communia、CC、ドイツAI業界団体(GEMAの30%より定額ZPÜ型を選好)、仏CSPLAは「オプトアウトは不十分」。採用政府なし
オプトアウト+透明性(TDM例外)機械可読の留保がなければ学習適法、開示義務研究・オープンモデルを守る、摩擦が少ないCSPLA「不十分」、標準未成熟、縮小するコモンズはニュースに偏る、ミュンヘン裁判所は「作品全体の記憶は対象外」、英国で支持3%EU 4条+AI法、英国の放棄案、Nasscom、Teostoの既定
フェアユース/無償TDM学習は非侵害、出力は別途規制競争・研究の最大化(EFF)、「財産権化の衝動」を避ける(Lemley)クリエイターが置換を負担(CISAC:音楽収益−24%、5年で220億ユーロ)、訴訟圧力で結局ライセンス市場が形成、判例が割れる(Ross、希釈論)米国の裁判所(Bartz、Kadrey)と司法省、日本30条の4、シンガポール
ニュース交渉法のAI版大手PFに交渉義務・課金、契約で相殺既存の立法技術出版社への一括金で個人・帰属に届かない、大手優遇(豪News Bargaining Incentive、カナダ年1億カナダドル、カリフォルニア2.5億ドル+AIアクセラレーター)豪・加・カリフォルニア(AIは明示的対象外か未整備)
データ尊厳・データ配当Lanier & Weyl:個人データの仲介者(MID)が組合/ASCAP型に交渉、労働分配率として約70%をクリエイターへ。カリフォルニア「データ配当」(2019、未立法)個人に直接届く思想1人年250〜500ドルでは小さすぎる、データ提供を増やすインセンティブ、プラットフォーム抵抗、巨大MIDの捕捉思想的参照点。制度化例なし
労働協約(SAG-AFTRA型)同意+「相当する労働」への支払い+残余報酬個人に確実に届く、最も精緻な式組合のある職種・肖像利用に限られる、アーカイブのライセンスには不向きSAG-AFTRA、WGA、EFFが著作権拡張より推奨
主要な政策文書・研究の要点(米著作権局Part 3、欧州議会調査、CSPLA、CISAC、Open Future、EFF 等)
  • 米著作権局 Part 3「生成AIの学習」(2025/5/9 公表前版):フェアユースは事案ごと、「市場希釈」を認知可能な損害として導入、海賊版ソースは不利。ライセンス節(85〜107頁):任意の直接ライセンスは音楽・ニュース・ストックで形成中、集団ライセンスは独禁法と事務の壁、強制許諾とECLには「現時点で支持少ない」、市場の発展を待ち、市場失敗が実証された分野でECL等を留保。公表翌日に登録官が解任され、その後復職。最終版は未公表。EFFは「市場希釈はいかなる裁判所も認めていない新奇な理論」と反論。
  • 欧州議会調査 Lucchi「生成AIと著作権」(2025/7):生成学習は「表現的複製」でTDMに当てはめるのは無理筋。CMOが監査可能な使用データに基づいて管理する集団ライセンスまたはAI出力への課徴金、AI Officeによるコーパスの無作為監査、EUIPOの機械可読許可レジストリ、非営利・オープンソースへの「イエローラベル」救済を提案。Peukert「著作権とAIの経済学」(2025/12)は例外/例外+オプトアウト/ライセンス市場/法定ライセンスを厚生モデルで比較。
  • 仏CSPLA 報酬ミッション(Bensamoun/Farchy、2024/4〜2025/7):オプトアウトは「重要な一歩だが不十分」——大規模に使われればAI出力とフランス語コンテンツの存在感を劣化させる。出所の透明性があれば権利者はオプトアウトを検証し「報酬という経済的帰結を導ける」。均衡あるデータ市場の条件は「整っている」。
  • CISAC/PMP Strategy 経済調査(2024/12):2028年までに音楽クリエイターは収益の24%、映像は21%を失うリスク、5年累計220億ユーロ。生成AI音楽・映像の市場は30億→640億ユーロ、提供者収益は3億→90億ユーロ。「報酬スキームの算定に資するため」の調査。
  • Open Future(Keller):報告書の誤診は「障害は交渉力であり、任意ライセンスはロングテールに届かない」。4条オプトアウトを放棄不能の報酬権=商用デプロイへの法定課徴金に置き換え、伝統的権利者以外(公共AIインフラ、デジタル知識コモンズ)にも再分配。
  • EFF(2025/2、2025/5):ライセンス義務は研究を殺し、ビッグテックとビッグメディアを固定化し、働くアーティストに届かない。独禁法・労働法・プライバシー法で対処すべき。
  • Creative Commons / Communia / Wikimedia:著作権は「全ての釘に使うハンマーではない」。クリエイターが撤退すればコモンズが囲い込まれる。互恵の信号と情報生態系基金を提案。Chesterman(2025):社会が人間の芸術を価値あるものとするなら、IPを介さず直接資金を出す必要があるかもしれない。
  • Lemley「生成AIは著作権を逆さまにする」(2024):著作権は学習を「正しく許容」している、「財産権化の衝動」に警戒。Lemley & Noti-Victor「AIコンテンツライセンスにおける反競争的黙従」(2025/11):大手が払うことで作る「市場」は後続の参入コストを上げる。救済:第三者に影響する和解への司法審査、フェアユース分析でのライセンス証拠の割引。

社会評論家の見立て

三極化は偶然ではなく、各国の産業政策の表れ。米国はフロンティア企業を抱え「学習は無料」で守る(司法省の意見書は国家安全保障と競争力に言及)。欧州はフロンティア企業を持たず権利者が強いから報酬権へ向かう。日本は「機械学習天国」(上野達弘)を自認しつつ、権利者の圧力でソフトローと競争法を積み上げる。「適切な対価」の定義は法理ではなく、自国に誰がいるかで決まっています。

「学習」と「出力」の分離が核心。米国の裁判所は学習をフェアユースとしつつ、海賊版入手と代替的出力を罰する。ミュンヘンは記憶そのものを複製と見る。どちらにせよ、戦場はRAGと要約の出力側に移っています。Cohere事件が「代替的要約」を侵害たり得るとした以上、ジャーナリズムを要約する全製品がこの射程に入ります。

独禁法は(米国では)効かなかった。Mehta判事は同情を示しつつ「議会か規制当局の仕事」と言い、英CMAと欧州委員会だけが動いている。ゆえに、米国での対価は任意で、Google・Metaの自前パイロットと競うしかない。

起業家の見立て

追い風。(1) 出力・RAGの責任リスクが世界中で最大の圧力点なので、「許諾済みを参照し、使った分だけ払う」製品は競合がリスクを抱える場所に立てる。(2) 機械可読の権利信号とレジストリ(AI法行動規範、EUIPO、RSL)に乗れば、欧州・英国の出版社への「権利を尊重する取得者」として売れる。(3) 透明性義務(AI法53条、カリフォルニアAB 2013、TRAIN Act、欧州議会の使用推定)は帰属と会計の需要を作る。(4) インドの法定ロイヤルティ構想が実現すれば、徴収・分配の仲介者が必要になる。(5) 英・豪・加・韓・EU・印の大半が「ライセンス必要」か報酬権方向で、補償レイヤーは米国以外で規制整合的。

逆風。(1) 米国では学習の対価は払われない——価値はリアルタイム参照・鮮度・独占・責任遮断で訴求する。(2) 価格は1生成数分の1セント、年100〜500万ドルといった薄利に向かう。(3) オプトアウト標準の乱立とレジストリ不在で、使用と権利者の突合はコストが高い(Bartz和解の共有権者紛争が示す通り)。(4) 2027年まで訴訟の不確実性が続く——契約は「学習料」ではなく「アクセス料」として設計する。

注視する日付。11/3 欧州委協議締切、11/6 OpenAI訴訟SJ反論、11月初旬 Getty控訴審、11/15 Bartz初回支払い、12/10 Dow Jones v Perplexity証拠開示終了、H2 2026 インド政府回答。

2.10 訴訟と和解が作った「価格」

市場が価格を出さないとき、価格は裁判所と和解が作ります。以下は2026年10月時点で「お金」に関わる主要な司法イベントです。

事件状態(2026/10)生まれた「価格」・含意
Bartz v. Anthropic(N.D. Cal.、著者集団訴訟)2025/6/23 Alsup判事:合法購入本の学習はフェアユース、海賊版700万冊の保管は非該当。和解15億ドル、2026/7/20最終承認。請求率92.8%(約45万作品)、弁護士報酬1億156万ドル(6.8%)。初回支払い2026/11/15までに1作品2,203.56ドル(総額約3,000ドル)。最終分割は2027/9。出力請求と将来行為は未解決米国で唯一、訴訟が定めた作品単価。ただし価格づけられたのは「海賊版入手のリスク」であって「学習の対価」ではない。請求手続き(作品リスト、著者/出版社50/50、エスクロー、特別マスター)は補償レイヤーの実装例。オプトアウト者による追加訴訟(Cruz、Kwon)
読売新聞 v. Perplexity(東京地裁、2025/8/7)差止+約21億6,800万円。2025年2〜6月に119,467本を取得、1本16,500円換算+広告収入減。2026/5下旬に初弁論、Perplexityは全面的に争う世界で最も明確な「1記事の価値」の主張(約110ドル)。判決は2027年以降
朝日新聞・日本経済新聞 v. Perplexity(東京地裁、2025/8/26)各22億円(一部請求)+差止+保存記事削除+虚偽回答での社名表示禁止。2026/5/14初弁論。Perplexity:30条の4で適法、robots.txtに法的拘束力なし、収益分配への参加を提案したが拒否された日本初の「RAG×有料記事×robots.txt無視×信用毀損(不競法)」の総合戦
GEMA v. OpenAI(ミュンヘン地裁、2025/11/11)/GEMA v. Suno(2026/7/31)歌詞のパラメータへの記憶=複製(「非可逆MP3」の比喩)、TDM例外の外、利用者ではなくOpenAIが責任、差止・学習ソース開示・損害賠償(額は未定、報道で「数十万ユーロ」)。Suno事件では米国での学習にドイツの管轄。いずれも控訴中裁判所がLLM提供者に事実上「CMOからライセンスを取れ」と命じた初の法域。ドイツではレパートリーの集団ライセンスが現実的な道に
Thomson Reuters v. Ross(第3巡回区、2026/9/29)Westlawヘッドノートで非生成AIを学習→フェアユース否定を維持。第4要素で「急速に発展中のAI学習データのライセンス市場」への損害を認定。生成AIは明示的に区別。Rossは大法廷・上告へ米控訴審がAI学習ライセンス市場の存在を初めて認めた判決。ただし生成AIへの直接適用は限定的
In re OpenAI(S.D.N.Y. MDL:NYT、Daily News、CIR、Intercept、Authors Guild、Ziff Davis等)2,000万件のChatGPTログ提出命令(2025/11、2026/1維持)。司法省の意見書(2026/9/2)。フェアユースの略式判決交互申立て(2026/9/4)、反論11/6。公判日なし。NYTは「数十億ドル」を請求出版社の「出力代替」理論の初の本格審理。原告勝訴なら、ニュースの学習がフェアユースでないとする初の連邦判断
Advance Local・Condé Nast・Atlantic・Guardian等 v. Cohere(S.D.N.Y.)2025/11却下申立て棄却:「代替的要約」(逐語でなくとも表現構造を映す出力)は侵害たり得る、「語数では決まらない」。幻覚帰属へのランハム法請求も存続回答エンジン・RAGの核心(要約)への出力側理論が生きている
Dow Jones・NY Post v. Perplexity(S.D.N.Y.)事実証拠開示2026/12/10終了、陪審公判は2027年。関連:Britannica(2025/9)、NYT・Chicago Tribune(2025/12)、CNN(2026/5、元支払いパートナー)、Reddit(DMCA 1201、2026/7に主要請求存続)Perplexityは最多被訴。収益分配プログラムと訴訟が並走する「和解の雛形」観測
UMG/Sony/WMG v. Suno・UdioUMG–Udio和解(2025/10/29)、WMG–Udio(11/19)、WMG–Suno(11/25、Songkick譲渡付き)、BMG–Suno(2026/8)、Believe–Suno(2026/9)。Sonyは両社と係争継続、UMG v SunoはAudible Magicで学習セット全体を照合し「数百万曲」を特定、対象を61,026作品へ拡大申立て(理論上の法定上限90億ドル超)、処分的申立ては2027/4「訴えて価格を作り、和解で製品を作る」。報道の1生成0.002〜0.005ドルは未確認。独立アーティストの集団訴訟は別途
Concord/UMPG v. Anthropic(歌詞)Concord II(2026/1):2万作品超、約30億ドル請求。Anthropicのフェアユース略式判決弁論2026/10/21判断待ち
Getty v. Stability AI(英高等法院、2025/11/4)学習請求は英国外で学習のため取り下げ。モデル重みは「侵害複製物」でない→二次侵害なし。商標は初期モデルの透かしのみ。控訴審2026/11初旬(法解釈の一点のみ)英国では「学習が侵害か」は未判断のまま。海外で学習したモデルには届きにくい
Penske Media / Chegg v. Google(D.D.C.、独禁)2026/9/30却下:「期待は合意ではない」、検索とAI Overviewsは別製品でない、独禁法上の原告適格なし。「議会か規制当局の仕事」米国で出版社がGoogleに支払いを強いる独禁ルートは閉じた
ANI v. OpenAI(デリー高裁、2026/7/24仮決定)学習・保存は一応フェアディーリング、仮差止め却下。管轄は認定。ANIは750万ドルのライセンスを提示していた「ライセンス提示額」が損害算定の基礎に
Kadrey v. Meta(N.D. Cal.)2025/6 フェアユース認定(「市場希釈」の傍論付き)、中間上訴は2026/7/8却下。関連書籍訴訟(Elsevier/Hachette/McGraw Hill等)は2027/5/24陪審公判希釈理論は「より良く主張された事件」待ち
2026年の新規提訴(抜粋)USA Today Co v OpenAI(2026/10/9、2.5億ドル)、地方紙30社超(2026/6)、Seattle Times・Newsday(2026/9)、Alden系9紙(100億ドル超)、WikiHow、Britannica v OpenAI、News Corp v Brave(2026/7)、APIG v Brave(仏、2026/6)、DPCMO v OpenAI(デンマーク、2026/2)、Perfil v OpenAI(アルゼンチン、2026/8)、Elsevier/Hachette v Meta、カナダ主要紙 v Anthropic(2026/10/21)、Disney/Universal/WBD v Midjourney(処分的申立て2026/11末)米国だけで2026/3時点で91件。訴訟は減速していない
その他の金額基準米法定賠償750〜15万ドル/作品、カナダ最大2万カナダドル/作品、中国ウルトラマン事件1万元・3万元、Kneschke v LAION(OLG Hamburg 2025/12:自然言語の留保は機械可読でない、BGHへ)—

社会評論家の見立て

価格は司法ではなく和解と市場が作る。米国の唯一の作品単価(3,000ドル)は海賊版の代償であり、学習の価値ではない。日本の16,500円は原告の主張に過ぎない。「1記事いくら」の社会的合意は存在せず、訴訟は価格ではなく交渉力を作っている。

「訴えてから署名する」の常態化。Folha、Indian Express、Condé Nast(Perplexityに警告書→Comet Plusのローンチパートナー)、CNN(Comet Plus→提訴)。訴訟と契約は同じ交渉の二局面で、公共的なルール形成にはつながりにくい。

起業家の見立て

和解の配管は製品になる。作品リスト、共有権者の分割、エスクロー、紛争処理——Bartzの請求手続きは、補償レイヤーが必要とする機能一式です。出版社と記者・フリーランス・通信社の取り分を事前に設計しておけば、音楽で起きた「仲介者の漏れ」訴訟を避けられます。

契約は「学習料」でなく「アクセス料」で。どの判決が出ても生き残るのは、リアルタイム参照・鮮度・出典保持への対価です。読売の16,500円とBlendleの0.25ユーロの間に、エージェントが払える価格帯があります。

2.11 オプトイン/倫理的学習モデルとデータ(「許諾されたものだけで作る」)

対価を後から付けるのではなく、最初から許諾データだけで学習する試みです。画像・音楽では商業的に成立し、テキストのフロンティアモデルでは未証明です。

取り組み内容性能・採用限界
Fairly Trained 認証(Ed Newton-Rex、2024/1)第三者データが全てライセンス・PD・自社保有のモデルに「Licensed Model」バッジ。申請者がソースを開示(信頼ベース)認証12社・2製品・5モデル(2026/10):Beatoven、Endel、Lemonaide、LANDR系、Soundful、Boomy、Jen、Kits、KL3M(テキスト)、Mitsua Likes(画像)等。圧倒的に音楽・声補償・クレジットは扱わない。フロンティアLLMは一つもない
Adobe FireflyAdobe Stock+PD+オープンライセンスで学習、投稿者ボーナス商業的に成立投稿者は学習に明示同意していない、ボーナスは裁量、AI生成ストックが学習に混入した批判
Bria(Fibo系)許諾データのみ、帰属エンジン、C2PA、補償データパートナー30社超、Nvidia・Microsoft・AWSと提携式非公開
Getty Generative AI(Nvidia Edify)Gettyのクリエイティブ2億枚のみで学習、無制限の補償、強化学習なし商業提供中Getty自身「クリエイターに補償する世界では、より少ないデータでやるしかないことがある」。Gettyは2026/3に継続企業の疑義、10/12に最大5.33億ドルの増資、10/21に財務再編
Shutterstock ImageAI / データライセンスデータセット販売+投稿者基金AI/データ収益2023年1.04億ドル→2026年上期−28%Getty–Shutterstock合併は英CMAの編集市場懸念で2026/8に終了。「AIにライセンスしても、生成AIによる本業の置換は相殺できない」
Moonvalley「Marey」/ Asteria許諾映像のみで学習した動画モデル(2025/7)fal.aiで提供、価格は要問合せ権利者への支払い条件非公開
ライセンス済み音楽モデル(2026年に出荷)Suno v6(2026/9/9):WMG許諾曲+ユーザーデータのみで「ゼロから」学習、UMG・Sony曲は除外、月間DL上限。Udio:ダウンロード不可の壁付き庭として再出発(公開日未確認)。KLAY:3大メジャー全てに許諾された初の「Large Music Model」(2025/11)、製品未出荷。Spotify:AIカバー/リミックスの有料追加プラン(UMG 2026/5、Merlin 8月、Kobalt 8月、Believe 10月、Sony・WMG未署名)。ElevenMusic:Merlin・Kobalt許諾Suno v6は実出荷、Udioは「DLできない最高の音」と不評Suno/Udio規模の品質は無許諾学習から生まれ、後からレーベルが「遡及ライセンス」した構図。制約付き許諾製品の商業性は未証明
Common Pile v0.1 → Comma 7B(EleutherAI等、2025/6)8TB・30ソース(PubMed Central、arXiv、StackExchange、GitHub issues、政府文書、特許、判例、1929年以前の書籍、Gutenberg、Wikimedia、CC-BYのYouTube字幕110万件等)。Open Definition準拠のみ、NC/ND除外、「ライセンス洗浄」防止規則Comma-1T/2Tは同予算のLlama-1/2級と互角、知識・コードは強い、常識・会話(HellaSwag等)で劣後合法的に集められるオープンテキストは約2兆トークンが天井。Qwen3(36兆)には届かない
Common Corpus(Pleias)(2024/11)約2兆トークン、文化・政府・OSS・科学・ウェブ、40%超が非英語小型モデルで文法は強いが常識で劣後「オープンデータのパラドックス」:小型モデル向き、大型にはデータが足りない
Apertus(スイス、2025/9)8B/70B、15兆トークン・1,811言語、robots.txtのオプトアウトを過去のクロールにも遡及適用、Goldfish lossで逐語記憶を抑制、重み・データ・レシピ全公開完全オープンモデルで多言語の最先端に接近(自称)コンプライアンス≠ライセンス:オプトアウトを尊重するだけで、誰にも払わない
KL3M(273 Ventures)/Harvard IDI Institutional Books/Wikimedia–Kaggle/LLM-jp法務・金融テキストの初のFairly Trained LLM/PD書籍約100万冊(Microsoft・OpenAI資金)/構造化Wikipedia/日本のオープンコーパス(30条の4に依拠)ニッチ・小型・公共財いずれも対価を払わないことで倫理性を達成する「公共オプション」

社会評論家の見立て

「倫理的AI」はニッチでしか成立していない。ストック画像と制作用音楽(用途が狭く、補償・免責が価値になる市場)では商業化できた。しかし汎用LLMでは、7B・2兆トークンまでは互角でも、それ以上の規模を許諾データだけで作った例はない。しかもストック業界の先駆者は、自らがライセンスしたAIに本業を置換されつつある(Shutterstock −28%、Gettyの継続企業疑義)。

「公共オプション」は払わないことで倫理性を得る。Apertus、Common Pile、Harvard IDIはオプトアウト尊重やパブリックドメイン利用で正当性を確保し、クリエイターへの対価という問いを迂回しています。これは解決ではなく回避です。

起業家の見立て

だからこそニュースの「許諾済みRAG」が、倫理的AIの最も現実的な製品領域。学習データとしてのニュースは代替可能で安いが、今朝の記事は許諾がなければ手に入らない。フロンティアモデルを借り、参照層だけを許諾済みにする構成は、技術的にも経済的にも成立します。

認証・補償・来歴は売り物。Fairly Trained型のバッジ、Getty/Bria型の補償、C2PA型の来歴は、企業顧客にとって「使っても訴えられない」保証であり、価格を取れます。

2.12 消費者向けAIニュース製品と、ニュース少額課金の歴史

ハッカソン案「あなただけのニュースキャスター」の直接の競争環境です。「許諾を取って払う」製品、「リンクだけ張る」製品、「スクレイプして訴えられている」製品に分けて並べ、続いて記事単位課金の20年の歴史を整理します。

競合マップ

区分製品仕組み・パートナー価格・支払い状態・教訓
許諾して払う(消費者向け)Particle(元Twitter PM・エンジニア、2024/11米国)「記事ではなくストーリー」単位の多ソース要約、賛否両論表示、ストーリー内チャット、トピックフォロー。パートナー記事は広告もペイウォールもなくアプリ内で全文配信。Reuters、AP、AFP、Fortune、TIME(TollBit経由)、The Atlantic、Getty、LA Times、SF Chronicle、Newsweek等。Axel Springer出資(Series A 1,090万ドル)無料、広告なし、購読「計画中」。出版社への分配条件非公開(「AIライセンスに業界標準はない」)稼働中。収益モデル未確立。元Scroll CEOが顧問
NewsGuard AI(2026/6)記者が審査した12,000ソースのみから回答するニュースチャットボット、目立つ引用、ファクトチェック、信頼性スコア。引用した全出版社と収益を50/50、学習に使わない価格非公開ハッカソン案に最も近い「信頼+50/50」ポジション。NewsGuard調査:チャットボットの虚偽反復率は35%(2025/8)、Perplexity 46.7%、ChatGPT 40%、Claude 10%
Perplexity Comet Plus2.2参照月5ドル、80%を出版社へ支払い実績非公開
Google News 音声ブリーフィング/記事概要(2026/10)400媒体超の有料コンテンツで、Google News上の記事概要とカスタマイズ可能な音声ブリーフィング。Google自身が「許諾ニュースで作る朝のニュースキャスター」を構築出版社への支払いあり、額非公開最大の既存脅威。Preferred Sources(利用者が約9万ソースを指定、指定ソースのクリックは約2倍)はオンボーディングの先例
Microsoft Copilot Daily(2024/10)Reuters、Axel Springer、Hearst、USA Today Network、FTの許諾コンテンツで音声ニュース・天気非公開PCM(2026/2)で従量化
Meta AI/Amazon Alexa+リアルタイムのニュース質問に出典名とリンク付きで回答/NYT等200社超の許諾二者契約チャット・音声アシスタントへの統合
ProRata Gist Answers出版社サイトに埋め込む回答ウィジェット、50%分配無料で埋め込み、Gist Adsの収益を分配「意味のある収益を得る出版社なし」(FIPP 2026)
Apple News+ / Apple Intelligence 要約News+は12.99ドル、Appleが50%を取り残りを滞在時間按分報道。通知のAI要約はBBCの抗議(見出し捏造)で2025/1に停止、iOS 26で免責表示付きで復活—「免責表示は修正ではない」。Appleは2026/8にSiri向けの従量払いを交渉中
許諾(一括)してリンクChatGPT(契約社のみ)/ChatGPT Pulse(2025/9、朝のブリーフィングカード)契約社の要約・引用・リンク。Pulseはハッカソン案の最も近いビッグテック類似品だが、出版社への支払い仕組みは開示なし二者契約。広告(2026/1〜)の出版社分配なし契約しても引用は保証されない。GPT-6のリンク仕様で参照計測が崩壊(2026/10/9)
Mistral Le Chat(AFP)/Gemini(AP、Yonhap、Estadão)通信社のリアルタイムフィードでグラウンディング複数年契約学習に使わない契約が増加
SmartNews(日米)3,000媒体超、1日40万本。SmartNews+は累計10万加入者(2025/7)、「AIまとめ」(2025/7)、AI翻訳(2026/7)、AI Transformation Division(2026/7)出版社への広告収益分配(SmartView)の条件は未確認日本の有料ニュースで10万人規模が成立する先例
リンクのみ・支払いなしGround Newsバイアス・事実性評価、盲点フィード。見出しを集約してリンクVantage 月8.33ドル(年払い)出版社への対価なし
Yahoo News(Artifact技術買収)/Readwise・Feedly・Inoreader/AIニュースレターAI要約・リーダー側要約—YahooはRSL 1.0の中核支持者でPCMの需要側
Artifact(Instagram創業者、2023/1〜2024/1)ML個人化、AIによる釣り見出し書き換え、AI音声無料、収益化せず「市場機会が投資を正当化するほど大きくない」として閉鎖。スター創業者でも、配信チャネルと支払いの物語がない単独ニュースリーダーは成立しない
無許諾・係争中Perplexity の既定の検索/Brave(Summarizer・Leo)/Arc Search・Diaスクレイプと要約—Perplexityは最多被訴、BraveはNews Corp・APIGから提訴、Arc/Diaは「払わずに要約」と批判
エージェント型ブラウザ(Comet、Atlas)利用者の代わりにペイウォール内を読む—Amazon v Perplexity:Cometエージェントへの差止は2026/8に第9巡回区が取消。「アクセスしたのは利用者」という先例はエージェント購読の論点
海外アジアNaver AI Briefing(韓国)/Toutiao・Doubao(中国)Naverは引用されたUGC作成者にインセンティブ、引用の70%がUGC(2026/1〜)。中国は未確認—放送3社がNaverを提訴中

ニュース少額課金の歴史:なぜ失敗し、何が残ったか

サービス期間モデル・価格結末・教訓
Blendle(オランダ)2014〜出版社設定価格0.09〜1.99ユーロ(典型約0.25)、Blendleが30%、すぐ閉じれば返金、24時間返金。55万ユーザー(2015)、NYT・Axel Springerが出資5年で出版社へ800万ユーロ払ったが黒字化せず、2019年に購読へ転換、2020年Cafeynに売却、少額課金は2023年に終了(「ごく限られた利用者」)。返金とキュレーションは愛されたが、需要とARPUが低く、購読を食った
LaterPay → Supertab2010〜「後で払う」タブ:1ドルか5ドルに達したら請求、時間パス(時・日・週)、出版社約80%。Google Offerwall(2025/6 GA、73か国)に統合。Supertab ConnectでRSL準拠のAI/ボットライセンス創業者は2010年から記事単位課金を推し続け、Googleの配信で初めて規模へ。「3倍の有料読者、約10%が3〜4か月で購読に転換」(自社主張)。INMA「少額課金の正念場」
Axate(英)2019〜ウォレット型。Toronto Starが採用。2記事1.5ドル→24時間パス小規模で稼働
Zette(米)2021〜約9.99ドル/月で約30記事のクレジット記憶消費者向けを畳み、AI向けB2Bニュースデータライセンスへ転換
Flattr2010〜2023月額予算を訪問先に分配、後に閲覧追跡でゼロクリック化、eyeoが買収2023/11閉鎖。プライバシー摩擦、寄付は規模化しない
Coil / Web Monetization(Interledger)2018〜2023月5ドルを秒単位でストリーミング2023/2閉鎖。利用者もサイトも少なすぎた
Scroll2018〜2022月5ドルで広告なし、約70%をエンゲージメント按分で出版社へ2021年Twitterが買収、2022年閉鎖。滞在時間按分は不透明でゲーム可能
Google News Showcase2020〜3年で10億ドル、キュレーションパネルとペイウォール内アクセス一括ライセンス。AIパイロットに置き換わりつつある
日本:cakes / note / 新聞電子版—cakes:週150円の読み放題、2022/8終了。note:クリエイターが記事価格を設定(創作者経済では成立、ニュースでは不発)。日経電子版 約4,277円/月、NewsPicks 約1,850円/月記憶記事単位課金は日本で定着せず、購読が主流。日本のニュース有料率は10%(DNR 2025、20市場中最低水準)
B2B記事単価(Factiva、Nexis、PressReader)—Factivaの従量約3〜5ドル/記事、Nexis約3ドル/文書記憶「許諾済み記事」の企業向け価格は消費者少額課金の10倍以上

理論が予言していた失敗。Clay Shirky「少額課金に反対する」(2000):利用者は項目ごとの判断を嫌い、無料の代替と束ね売りが勝つ。Nick Szabo「少額課金と精神的取引コスト」(1999):技術手数料はゼロに近づくが、買い手の認知コスト(事前に品質が見えない、判断の手間)は減らない。負担の大きい順に「交渉→変動→単位→定額」。ブランドは品質の代理指標になる。そしてエージェントへの委任は「上限付き予算か定額」でのみ成立する——利用者はエージェントが誰の利益で動いているか検証できないから。Bakos–Brynjolfsson(1999):限界費用ゼロの情報財は束ねるほど評価のばらつきが減り、売り手収益も利用者の受容も上がる。Reuters Institute:米国の非購読者で記事・日パスを「検討する」のは約5%、すでに払っている20%より少ない。

価格ベンチマーク(記事・1,000リクエスト・月額)

項目価格単位・注記
Blendle 1記事0.09〜1.99ユーロ、典型約0.25、手数料30%消費者が歴史的に許容した記事単価
Supertab タブ閾値1ドル/5ドル、時間パス、出版社約80%パス単位
読売新聞の主張額1記事16,500円(約110ドル)Perplexityへの訴訟での算定
Supertab Connect 例示1リクエスト0.002ドル例示のみ
Cloudflare Pay Per Crawl(第三者推計)一般0.001〜0.005ドル、プレミアム0.05〜0.25ドル1クロール
Redpine(redpine-science)1,000配信トークンあたり0.5 → 約1,200トークンの記事で約0.6単位(通貨)はダッシュボードで要確認。ニュースコレクションは別価格
NewsAPI Business月449ドルで25万リクエスト(約0.0018ドル/件)メタデータのみ、全文なし
Perigon月25ドルで1,000件(25ドル/1,000)ニュースAPI、再配信不可
Diffbot月299ドルで25万クレジット(約0.0012ドル/ページ)抽出
Newscatcher月50ドルで6,000クレジット、1件10クレジット(約0.083ドル/件)全文あり
Google AI貢献パイロット式非公開。観測値:1,000ドル未満〜年100万ドル超/社「有意な貢献」単位
Perplexity Comet Plus月5ドル、80%→約4ドル/人/月が出版社プール訪問・引用・エージェント操作
ProRata Gist / NewsGuard AI収益の50%寄与率/引用で按分
Google Offerwall リワード広告出版社70%—
Apple News+ / Scroll50%(時間按分)/約70%束ね売りの分配
大手の二者契約NYT–Amazon 年2,000〜2,500万ドル、News Corp–OpenAI 5年2.5億ドル、News Corp–Meta 年最大5,000万ドル、FT–OpenAI 年500〜1,000万ドル、TOI 年約500万ドル、Snowflake「6桁」一括・年額
消費者向けAI/ニュース購読Comet Plus 5ドル、Ground News 8.33ドル、Economist Podcasts+ 5ドル、Perplexity Pro 20ドル、Apple News+ 12.99ドル、SmartNews+、日経電子版4,277円月額
日本のポータル配信許諾料1,000PVあたり124円(0.12円/PV)公取委2023

社会評論家の見立て

読者は記事単位で意思決定したくない。これは20年間、国を問わず一貫した結果です。だから「対価」を利用者の善意に頼る設計は失敗する。他方、AI要約は出典の60%を間違え、虚偽の反復率は1年で倍増し、Appleは要約を一度止めた。信頼が商品になる局面で、ニュースの「社会的価格」が決まっていないのは危うい。

Googleがキャスターを作る世界。400媒体の記事で音声ブリーフィングを作る最大のプラットフォームと、12,000ソースで50/50を約束するNewsGuardと、無料で広告もないParticle。中立なAIニュースの空間がどの原理で組織されるかは、まだ決まっていません。

起業家の見立て

人にはバンドル、エージェントには従量。定額(月5〜8ドル相当)を人から受け取り、エージェントが利用者設定の日次上限の中で記事単位に買う。Szaboの条件そのものです。

単価の現実。Redpineの科学コレクションの単価が通貨単位でそのままなら、1記事約0.6、5本の全文で1日約3——月5ドルの購読では成り立ちません。だからスニペット優先・全文はオンデマンド・「深掘り」要求時のみ長文、そしてニュースコレクションの単価交渉が設計の前提になります。

分配台帳を製品にする。Perplexity・Google・Microsoftが揃って「支払額非公開」で批判されている以上、「今週Reutersに¥X、日経に¥Y」をアプリ内に表示し月次明細を公開するだけで差別化になります。

単独リーダーは死ぬ。Artifactの教訓。朝が起きる場所(LINE、Slack、スマートスピーカー、車、カレンダー)に出荷し、楔は狭く(例:訪日外国人向け英語、SmartNews+が10万人を証明した日本の有料層)。

2.13 日本の状況

日本は「学習は自由(30条の4)/検索・出力で争う(47条の5、類似性・依拠性)」という固有の構図を持ちます。法改正は2026年10月時点で行われておらず、政府はソフトロー・契約・競争法の組み合わせで対応しています。

法制度・行政

項目時期内容対価還元への含意
著作権法30条の4/47条の52019/1施行享受を目的としない利用(情報解析=AI学習)は無許諾で可、営利・国内外を問わない。ただし書「著作権者の利益を不当に害する場合」。47条の5は検索・解析サービスの「軽微利用」学習段階の対価請求権が法的に存在しない。JASRACは「G7で唯一、享受目的の有無で権利を制限する枠組み」と批判
文化庁「AIと著作権に関する考え方について」2024/3/15享受目的の併存(意図的過学習、特定作家のLoRA、既存表現を出力させるRAG用DB)は30条の4外。有償提供されている解析用DBの無償複製、robots.txt等の技術的措置を回避した複製はただし書該当の可能性。海賊版と知りつつ学習は責任あり対価還元に関する記述はなし(純粋な現行法解釈)。ただし「有償ライセンス市場が実在すること」が権利者の法的地位を強める構造
文化庁「チェックリスト&ガイダンス」2024/7/31権利者向け:robots.txt、ログイン保護、「AI学習用DBとして有償ライセンス提供」自体がただし書を働かせる根拠。開発者向け:robots.txt尊重、学習ログ保持、類似物生成防止市場を作ることが法的防御になる、という循環
文化庁 相談窓口/関係者ネットワーク/対価還元データ流通促進事業2024〜2026法律相談26件(R5)→89件(R6)。関係者ネットワーク総括(2025/5/30):「対価還元の仕組みは現行法の枠内では解決できない課題」。「クリエイターへの対価還元に向けた著作物等データ流通促進事業」:マンガ・アニメ・映像・文芸で有償データセット提供のモデル事例を実証、令和8年度要望3億円(新規)、補正予算で複数年度政府自身が「法律では解けない、契約で作る」と明言。実証の計測・分配インフラは未整備
内閣府「プリンシプル・コード」(生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード)2026/8/24決定確認済原則1:企業サイトでの概要開示(モデル、学習データ種類、クローラ名・識別子、第三者クローラ、robots.txt/ペイウォール遵守、学習ログ保持、海賊版回避、透かし/C2PA、権利者窓口 等)。原則2:訴訟・ADR準備中の権利者からの「学習データに含まれるか」照会に回答。原則3:利用者からの類似コンテンツ照会に回答。公衆向け生成AIの開発者・提供者が対象、comply or explain、受諾・実施状況の公表・届出・年次見直し。パブコメ2,161件・99団体。届出受付は2026/10/26開始と報道報道法的拘束力なし。権利者側は「RAG/API経由データへの拡張、クローラ偽装禁止、政府調達での遵守要件化」を要求。事業者側は「既存モデルはURLログ未保持で回答不能」。出典・利用ログを自動保持する許諾データ層は、そのままコード準拠の証跡になる
知的財産推進計画20262026/6/12プリンシプル・コードの周知、クリエイターへの対価還元を促す枠組み構築の促進(文化庁実証)、ライセンス情報共有、生成AI要約サービスとrobots.txt等の技術的措置の関係・UA開示の課題整理(内閣府・公取委・文化庁)、声・肖像の不競法改正を含む法整備の議論継続30条の4の見直しや集中管理には言及なし。意見募集では「AIと知財」が個人意見の52%、大半が規制強化・オプトイン・対価還元を要望
AI推進法/AI基本計画2025/5成立・9/1施行/第Ⅰ期2025/12/23、第Ⅱ期2026/7/14罰則なし、AI戦略本部。基本計画に「知的財産の保護と利活用につながる透明性の確保」「コンテンツホルダーへの対価還元等の推進」。第Ⅱ期(「日本AX」)で声の無断利用への不法行為法ガイドライン、不競法改正を含む法整備検討、AI開発専用データの個情法特例「クリエイター」「報道」の語は不使用。方向性は示すが仕組みは未設計
総務省・経産省「AI事業者ガイドライン」1.2版2026/3/31データの適正取得・著作権配慮・透明性ソフトロー
公正取引委員会2023/9/21、2025/12/24、2026/4/16、2026/7/82023年ニュース配信実態調査:許諾料1,000PVあたり平均124円(最大251円・最小49円)、算定基準不明確7割、Yahoo!は優越的地位の可能性。2025/12/24〜AI検索(Google、LINEヤフー、Microsoft、OpenAI、Perplexity、Anthropic)を調査、想定違反類型は優越的地位の濫用・取引妨害・抱き合わせ、「無断利用自体が直ちに違反ではない」。2026/7/8に報道約370社・消費者2,000件アンケート、英CMAの是正措置を注視。生成AI実態調査ver2.0(2026/4)対価の単位(PV)と算定の不透明さが「問題」と認定されている。報告書時期未定
声・肖像2026/8〜10法務省「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」報告書(2026/8/7):声をパブリシティ権・人格的利益の保護対象に。東京地裁2026/9/30:声の無断使用はパブリシティ権侵害になり得る(削除済みで請求棄却)。産構審不正競争防止小委(2026/10/13):「商品等表示に肖像・音声を追加」または「新類型創設」声は日本で最も法整備が進む領域。ポッドキャスト(News Connect)に直結
著作権法改正の検討20262026/6時点で30条の4を含むAI関連改正なし。新聞協会(2025/6、2026/4)とJASRAC(2026/6)がオプトアウトの法的義務化と30条の4見直しを要求、政府は「課題整理」まで対価は法律からは生まれない

業界団体の声明(主要なもの)

日付団体要点
2023/7/5JASRAC「生成AIと著作権に関する基本的な考え方」:営利学習のフリーライド批判、G7唯一の享受目的枠組みへの懸念
2023/8/17新聞協会・雑誌協会・書協・写真著作権協会4団体共同声明:法改正を含む保護策を要求
2024/7/17日本新聞協会検索連動型AI(RAG)の無断利用批判、法整備要請
2024/11/13日本俳優連合・日本芸能マネージメント事業者協会・日本声優事業社協議会無断生成AI利用への共同声明。少なくとも267人の声が無断利用。「NOMORE無断生成AI」キャンペーン
2025/6/4日本新聞協会robots.txt尊重の法的義務化、クローラUA公開、検索用/AI用クローラ分離の標準化、30条の4見直し。過去記事DBの有償市場を毀損、ゼロクリック懸念
2026/4/20日本新聞協会AI検索サービスに関する声明:Google AI Overviews/AI Modeは通常検索とクローラ制御が共通でオプトアウト不能=優越的地位の濫用疑い、3年協議しても改善なし、英CMAの是正策に言及。短期:オプトアウト尊重の法的義務化・コード強化
2026/6/11JASRAC特設ページ+AI利用作品ガイドライン:30条の4改正と「断る権利」。クリエイター調査(2026年1〜3月):反対54%・賛成20%。AI自律生成作品は管理せず、人間寄与部分のみ管理
2026/10/15日本俳優連合音声に関する生成AI利用ガイドライン(全6部22条):段階ごとの書面同意、同意は原則1年、対価4類型(学習料・生成AI使用料・追加使用料・多言語化使用料)、故人の声は原則禁止
継続経団連・新経連・JDLA・AIガバナンス協会 vs 権利者団体前者は「30条の4は競争力の源泉、ソフトローと契約で」、後者は見直し要求。政府はコードと対価還元実証で中間を取る

訴訟、契約、還元ビジネスの実例

事例時期仕組み・金額状況
読売 v Perplexity/朝日+日経 v Perplexity2025/82.10参照。読売は1本16,500円×119,467本。朝日・日経はrobots.txt無視、有料記事の複製、ステルスクロール(Cloudflare指摘)、不競法の信用毀損2026/5に初弁論。Perplexity「30条の4で適法、robots.txtに法的拘束力なし、収益分配を提案したが拒否された」。判決は2027年以降
Yahoo!ニュース等への配信継続1,000PVあたり平均124円。220社の6割がYahoo!を最大配信先、4割が「事業継続に不可欠」公取委のフォローアップ調査中(2025/12〜)
Perplexity Publishers Program:NewsPicks(ユーザベース)・みんかぶ2024/12/5引用時の広告収益分配+API・Enterprise Pro。日本初のAI企業とのニュース契約2026/2のPerplexity広告廃止で分配根拠が消滅
Perplexity Comet Plus の日本提案2025/8〜プール約4,250万ドル(共同通信「約63億円」)の8割を出版社へ読売・朝日・日経は拒否した模様
日経グループ2024/4〜2026/9FT(日経傘下)はOpenAI・Google・Microsoft・ProRataと契約。日経本体は外部AIにライセンスせず、自社B2B RAG「NIKKEI KAI」(MCP対応、2026/9/1、NTTデータ販売)を展開「ライセンスするより自分で作る」路線
note「AI学習対価還元プログラム」2025/8/1正式開始オプトイン、テキストのみ。AI事業者へのデータ提供収益からPF手数料を引いてクリエイターへ。試験期間:参加1,200名超、総額500万円超、個人最高40万円超国内最大の還元実例。分配率・算定基準は非公開
Redpine Connect/東京ハッカソン2026/4(シード)、2026/10/23Redpine Technology AB(ストックホルム、2024年設立、CEO Anders Hammarbäck)。シード800万ドル(NordicNinja主導)。許諾トークン2,000億超・パートナー50社超。ハッカソンのデータ提供:News Connect(クロニクル制作の経済ポッドキャスト)、ADDIX(JR東海傘下のライフスタイルメディア)、東武鉄道。Lovable協力日本の「許諾済みデータAPI」の空白を埋める外資。日本法人の有無は未確認
TollBit 日本参入2025/10/16Japan Business Press、BI.Garageと提携国内初のpay-per-crawl流通
Adobe Stock/Getty/Shutterstock の投稿者還元2023〜グローバル制度、日本からも参加可配分の透明性に批判
CoeFont・VOICEVOX 等の許諾付き合成音声2021〜声優本人の許諾付き音声を利用料で提供、本人へ還元(CoeFont)日俳連の4類型が業界標準化を狙う
日販GHD→Anthropicへの書籍販売/書協のAI対応出版契約ヒナ型2026取次による大量販売を書協が再販契約の観点で事実確認と報道。契約ヒナ型にAI条項詳細未確認。著者・出版社への還元経路が論点
マンガAI翻訳(Mantra、オレンジ)2024〜集英社・小学館・KADOKAWA等が出資、翻訳コスト削減。原作者還元は通常の海外版印税経路AI翻訳固有の還元仕組みは未確認
国内LLM(PFN、Sakana、NTT、SB、楽天、ELYZA、Stockmark、LLM-jp)—独自収集ウェブ+公開データ中心許諾データのみで学習したと公表する国内基盤モデルは確認できず。文化庁実証はこの供給を狙う
日本の論客・有識者の対立軸
論者立場
上野達弘(早稲田大)「機械学習パラダイス」論の提唱者。2025/9文化審WTでは「ライセンスか契約かを厳密に区別しない実務の知恵」「高品質データ提供の有用性」——現行法維持+契約による還元
奥邨弘司(慶應大)・茶園成樹法制度小委の中核。類似性・依拠性の通常基準、享受目的併存論
福井健策(弁護士)クリエイター側。集中管理・報酬請求権・オプトアウト等の制度設計を提唱(2025〜26年の個別提言は未確認)
柿沼太一(STORIA法律事務所)プリンシプル・コードの実務解説。「境界事例が多い」「コストだけでは技術的不可能と認めない事務局姿勢は小規模事業者に負担」「インセンティブ文言削除も調達・上場審査で事実上強制の懸念」
水野祐・城所岩生・生貝直人・田中辰雄契約設計/フェアユース導入論/EU比較・透明性/経済学的分析(個別提言は未確認)
山田太郎・赤松健(参院議員)表現の自由・クリエイター保護とAI推進の両立派。無断学習不安には透明性と相談体制で
新聞協会 vs 経団連・新経連・JDLA「学習もRAGも許諾原則、オプトアウト義務化、30条の4見直し」vs「30条の4は競争力の源泉、ソフトローと契約で」

日本固有の構造的論点

  1. 「学習は無料」だから、対価は法律からは生まれない

    学習段階の対価請求権が存在せず、文化庁・経産省の関係者ネットワーク自身が「対価還元は現行法の枠内では解決できない」と総括しています。還元の経路は (a) 契約・市場(有償データセット、API課金)、(b) ソフトロー(プリンシプル・コードの開示→市場評価)、(c) 競争法(公取委の優越的地位・取引妨害)、(d) 不法行為・不競法(声・肖像、信用毀損)の4つに限られます。逆に「有償でライセンス提供されているデータの無断複製は30条の4ただし書に該当し得る」ので、ライセンス市場を実際に作ることが権利者の法的地位を強める——Redpine型の許諾データAPIは「ただし書を発動させる市場の実在」を供給する装置です。

  2. 戦場は学習ではなくRAG・AI検索(47条の5)

    読売・朝日・日経の訴訟は全てRAGの出力(複製・公衆送信・翻案、軽微性、robots.txt無視、信用毀損)で争われています。文化庁は「robots.txt無視+大量反復取得はただし書該当の可能性」と示唆しており、2027年以降の判決が日本のRAGルールを決めます。RAGソースを「許諾済み・課金済み・出典保持」にすることは、日本では法的リスク低減と差別化を同時に達成します。

  3. 新聞社とAI企業の力関係は「大手は訴訟、小規模は提携」に二極化

    大手3紙は提訴、NewsPicks・みんかぶは提携。国内ニュース市場はYahoo!一極(0.12円/PV)で既に交渉力が弱く、GoogleのAI検索の「オプトアウト不能」がそれを増幅しています(2026/4新聞協会声明)。公取委のフォローアップ(英CMA型の是正を注視)が2026〜27年の最大の制度変数です。

  4. 集中管理は「断る権利」優先で未着手、料率の雛形は音声にある

    欧州のGEMA・STIMがAI学習ライセンスを開始したのに対し、JASRACは30条の4改正と「断る権利」を優先。JRRC・JCOPY・JAC・NexToneのAI包括許諾も確認できません。一方で日俳連は2026/10に対価4類型という料率体系の雛形を提示しており、声・音声(ポッドキャスト=News Connect)は日本で「許諾+対価類型」が最も具体化している分野です。

  5. 空白地帯(事業機会)

    (1) 記事・音声単位のメータード課金——日本では記事単位課金が定着しなかった(cakes終了、購読主流)が、「人ではなくエージェントが買う」文脈ではpreview→confirm型が初めて成立し得る。(2) 透明性の自動化——プリンシプル・コードの原則1〜3は届出事業者にとって事務負担であり、出典・利用ログを自動保持する許諾データ層はそのまま準拠の証跡になる。(3) 文化庁実証(3億円)との接続——マンガ・アニメ・映像・文芸の有償データセット事例が2026〜27年に生まれるが、配信・計測・分配のインフラは未整備。(4) PV単価の次の単位——公取委が「算定基準の不透明さ」を最大の問題と認定している以上、トークン・引用回数・寄与率という可監査な単位での自動分配は提言方向と一致する。(5) オプトアウト不能問題の裏返し——「使われたくなければ検索からも消える」構造に対し、「使われたら必ず払われる」構造を示すこと自体が新聞協会・公取委・CMAの問題意識への直接の応答になる。

社会評論家の見立て

日本は「機械学習天国」の代償を、ソフトローと競争法で払おうとしている。30条の4を動かさずに、開示(コード)・実証(3億円)・調査(公取委)を積む。これは政治的には合理的ですが、権利者から見れば「学習は無料のまま、透明性だけ増える」状態です。新聞協会とJASRACが揃ってオプトアウトの法的義務化を求めるのは、米国でも欧州でもなく「同意」の最低線を求めているからです。

日本で最も具体的な対価の仕組みを作ったのは、政府でも大手紙でもなく、noteと声優団体だった。note(オプトイン、1,200名、500万円超)と日俳連(4類型)。制度は現場から生まれています。

起業家の見立て

日本は「許諾済みニュースAPI」の空白市場で、しかも規制がそれを後押しし始めている。公取委は算定の不透明さを問題視し、知財計画2026は対価還元の枠組みを促進し、プリンシプル・コードは出典・ログの保持を求める。可監査な単位で自動分配する許諾済みデータ層は、この三つに同時に答えます。

ベンチマークは0.12円/PV、16,500円/記事、500万円/1,200名。この3点の間に、エージェントが買える価格帯と、クリエイターが「意味がある」と感じる還元額の設計空間があります。

Redpineの上に「日本語の需要側」を作る。データ供給(News Connect、ADDIX、東武)はある。誰が、いつ、なぜ、いくらで買うかの体験が問われています。

2.14 音楽・画像・映像・声からの教訓(ジャーナリズムに移植できる仕組み)

非テキスト産業はニュースより先に「訴訟→和解→ライセンス製品」の一巡を経験しました。何が成立し、何が失敗したかは、ニュースの設計に直接使えます。

産業2025〜26年に起きたことニュースへの教訓
音楽:訴訟から「和解してライセンス」へUMG–Udio(2025/10/29、ダウンロード不可の壁付き庭、過去分の補償金+新ライセンス)、WMG–Udio(11/19)、WMG–Suno(11/25、Songkick譲渡、月間DL上限)、KLAY(3大メジャー全許諾、11/20)、UMG/WMG–Stability。2026年:Merlin–Udio(1月、オプトイン)、Kobalt–Udio(4月)、BMG–Suno(8月)、Believe–Suno(9月)、Suno v6(9/9、WMG許諾曲+ユーザーデータのみ)。Sonyは両社と係争継続。Spotifyの有料AIカバー/リミックス(UMG・Merlin・Kobalt・Believe)。唯一公開された式はElevenLabs(原盤/出版50/50、人気加重、Kobalt MFN)(1) 訴訟が価格を作り、和解が製品を作る——証拠開示(Audible Magicで「数百万曲」)と企業価値(Suno 24.5億ドル)が揃って初めて取引可能に。(2) 料率は秘密、構造は公開。(3) オプトイン+既定ブロックが標準。(4) 製品の制約(DL上限・エクスポート不可)自体が計測と分配の仕組み。(5) 帰属技術は提供ではなく要求される(STIMがSureelを必須化→WMGがSureelを買収)
音楽:取り締まりがライセンスより先に稼ぐDeezer:日次9万曲(50%超)がAI、不正ストリームの85%を非収益化。Spotify:2026年に推薦から5,000万曲超の「スロップ」を除去、AI Credits(DDEX)、1,000再生/12か月の支払い閾値ボットトラフィックの広告・指標プールからの排除、AI生成コンテンツの表示、検知証拠を交渉に使う——近接の実務レバー
ストック画像:先駆者の苦境Shutterstock Contributor Fund(2022)、Getty Generative AI(2023/9)、Adobe Firefly ボーナス(2023/9)、Canva 2億ドル(2023)が先行。しかしGetty–Shutterstock合併は英CMAの編集市場懸念で2026/8に終了、ShutterstockのAIデータ収益は2026年上期−28%、Gettyは継続企業の疑義(2026/3)→最大5.33億ドルの増資(10/12)→財務再編(10/21)AIにライセンスしても生成AIによる本業の置換は相殺できない。不透明な「ペニー」配分は投稿者の信頼を失う。透明で経常的な従量払いだけが投稿者を味方に保つ
映像:看板契約の2連敗Lionsgate–Runway(2024/9、2万本)は2025年に「使えるモデルにならない」と報道(カタログが小さすぎ、出演者の肖像処理が未解決)。Disney–OpenAI(2025/12/11、10億ドル出資+200キャラクター、Sora 2)はOpenAIが2026/3/24にSoraを終了して消滅——ピーク100万ユーザー、1日約100万ドルの赤字、Disneyは公表の1時間前に知らされた。許諾限定モデルMoonvalley Marey、映像ブローカーTroveo(累計2,000万ドル支払い、1分1〜4ドル)、Protege(a16z)(1) 単独の出版社のアーカイブだけでは学習用途の戦略的価値は薄く、レバレッジは集団化か参照ライセンス。(2) 契約の中身より、相手の製品が生き残るかが最大リスク——最低保証、解約金、終了時のデータ削除・返還条項。(3) 希少な供給(未公開映像)だけが単価市場を持つ
組合協約:最も精緻な「式」SAG-AFTRA 2023 TV/映画:デジタル複製の作成に1日分、使用に「本人が働いたはずの日数」分+残余報酬、他作品使用は都度同意。ゲーム協約(2025/7)、CM協約(2025)。WGA:AIは脚本を書けない。「Tilly Norwood」(AI女優、2025/9)をめぐる反発記者の「デジタル複製」(合成署名、音声クローンのポッドキャスト、AIリライトのコラム)への「相当する労働への支払い」ルールは、組合契約で設計できる。EFFが著作権拡張より推奨する経路
声・肖像:最も成熟した「従量市場」ElevenLabs Voice Library(1,000文字単位、累計100万ドル→約1,100万ドル未確認)、Iconic Marketplace(約50の遺産・キャラクター、ブランドが権利者と直接交渉)、SAG-AFTRA–Narrativ(俳優が組合最低額以上で自ら価格設定)、Respeecher、Vermillio、YouTubeの肖像検知(2025/10、収益化なし)。法:テネシーELVIS法(2024)、NO FAKES法案(上院司法委2026/6)、デンマークの肖像著作権、日本の日俳連4類型・法務省報告書・東京地裁判決(2026)個人が自分の価格を設定する市場(Narrativ型)は、記者の声・顔のAIナレーション利用に転用可能。日本では声が最も法整備が進む
コード・ゲーム・フォントStack Overflow–OpenAI(帰属あり、投稿者分配なし→反発)、Doe v GitHub(第9巡回区係属)、Open Source Pledge(開発者1人年2,000ドル以上、累計742万ドル)、Unity Asset StoreのAI開示義務、Roblox「Cube」、Monotype(補償制度なし)投稿者への還元なしでライセンスすると「投稿者の反乱」が起きる

移植可能な仕組み

仕組み(出所)ニュースへの移植注意点
オプトイン登録+既定ブロック+機械可読の許可(STIM/Sureel、Spawning、Cara)記事・写真ごとに学習/参照の許可を持つ出版社・記者の登録簿。既定は学習不可。ライセンスは登録簿に紐づく運営主体(業界団体かCMO)が必要。robots.txtでは足りない
プール比例配分+利用加重(ElevenLabs:作品数×人気、LANDR:数のみ)AI製品収益の一定%をプールし、(a) 取り込まれた許諾記事数と (b) 参照・引用頻度で配分人気加重はニッチ・地方に不利。下限か「均等割トランシェ」で補正
出力ごとの帰属と支払い(Musical AI 30%、Bria、Udio)回答ごとの引用ログ→参照された記事へのマイクロロイヤルティ。RAGは拡散モデルやLLM事前学習よりはるかに帰属しやすい学習と参照を分ける:学習は定額、参照は従量
層間の分割とMFN(Kobalt 50/50、MFN)出版社と元記者・写真家・通信社の固定分割、小規模出版社が大手の最良条件を継承するMFN契約の標準化が必要。労組が記者層をSAG-AFTRA型で交渉し得る
壁付き庭・制約付き出力(Udio、Suno)リンクアウトし、逐語再現の長さに上限を設け、要約を自製品内に留める許諾AI回答。商用再利用は有料階層読者は創作ツールより情報で壁を嫌う
帰属技術を条件とする集団ライセンス(STIM、GEMA)学習+出力シェアの包括ライセンス(モデルバージョン単位)、帰属・ログ統合を条件に独禁法審査。米国に新聞CMOなし、欧州・北欧に先例
「相当する労働」への支払い(SAG-AFTRA)記者のデジタル複製(合成署名、声クローン、AIリライト)に都度同意+本人が得たはずの報酬+残余組合契約が器。アーカイブのライセンスより人格・肖像向き
検知→非収益化→ライセンス(Deezer、Spotify)スクレイプ/AIリライト記事の検知、指標からボット除外、検知証拠でライセンス交渉(レーベルがAudible Magicでやった通り)テキストの検知精度は音声指紋より低い
単位データ価格(映像1分いくら、声1,000文字いくら)学習向けは記事・語・画像単位の一回払い、参照向けは取得ごとの経常払い一括はコモディティ価格に。差別化は独占・鮮度・メタデータ
二段階同意(Believe/TuneCore)フリーランス基盤・通信社が寄稿者に (1) AIプログラム対象になるか (2) 案件ごとに参加するか を聞く低コストで、ライセンシーが求める同意記録を作れる

社会評論家の見立て

音楽は「ライセンスは著作権の問題を解決するが、労働の問題は解決しない」ことを示した。セッションミュージシャンは除外され、独立系は後回し、レーベルに届いた金は演奏者に届かない。ニュースでも、出版社への支払いと記者・フリーランス・写真家への支払いは別の問題として最初から設計しなければ、同じ訴訟が繰り返されます。

先駆者ほど傷ついた。最も早くAIにライセンスしたストック画像業界は、そのAIに本業を置換されつつある。「対価」は補償であって、置換への保険にはなりません。

起業家の見立て

構造を公開し、料率を交渉する。音楽の全契約がそうしたように、「オプトイン・既定ブロック・帰属ログ・分割比率・MFN」は公開し、単価は交渉で決める。これだけで出版社との会話が成立します。

相手の製品の生存を契約に織り込む。Sora、Lionsgate–Runway、Perplexityの広告廃止。「プログラムが消えたら支払いも消える」リスクを、最低保証・解約金・データ削除で手当てする。

希少性を作る。学習用のニュースは安い。しかし「今朝の、許諾済みの、出典付きの、エージェントがすぐ買える」ニュースは、まだどこにも売っていません。

3. 社会評論家の総括「適切な対価」とは何かを問い直す10のテーゼ

ここまでの事例を、社会の側から読み直します。批評の基準は四つ——(1) 対価が実際の使用と結びついているか、(2) 対価が作り手個人に届くか、(3) 仕組みが透明で監査可能か、(4) ロングテール(地方・非英語・独立系・中小)を包摂しているか。

  1. 「ライセンス市場」は市場ではなく、休戦協定の束である

    公開91件、非公開はその50〜100倍。しかし価格は使用価値ではなく訴訟リスクと交渉力で決まり、英国のGoogle契約には不提訴条項が付くと報じられ、同じ社がOpenAIと契約してPerplexityを訴える。市場の第一条件である価格の公開性がなく、「出版社は多数で代替可能、AI企業は少数」という非対称の下で、ライセンス価値はコンテンツの限界価値へ収束していきます。AI企業はこれを「信頼できるジャーナリズムを届ける」と呼び、出版社は「平和を借りる」と呼びます。

  2. 金額は「歓迎すべきだが、ゲームチェンジャーではない」規模に収まった

    NYT・Dotdash・Axel Springerで売上の約1%。Googleの貢献パイロットでは小規模サイトの広告収益の0.1%未満。Comet Plusの4,250万ドルを2,400社で割れば1社年1.8万ドル未満。業界全体の推計でも年8億ドル程度で、ジャーナリズム全体の損失(Google流入−33%)を埋める規模ではありません。「対価還元」は補償であって、ビジネスモデルの代替ではない。

  3. 作り手個人への還元は、制度的に欠落している

    米国の記者労組の協約43件にAI収益分配は0件。出版社は契約を労組にも見せない。書籍ではWileyとT&Fが著者のオプトアウトを拒み、HarperCollinsは1冊5,000ドルの半分を取る。Stack Overflow・Wikipedia・Redditの投稿者、Shutterstockの写真家(1枚0.0078ドル)、音楽のセッションミュージシャンには事実上何も届かない。唯一の例外は法律で記者の取り分を保障したフランスです。「クリエイターに適切な対価」という目標は、「著作権者に対価」とは別の問題であり、ほとんどの解決策は前者に手を付けていません。

  4. 対価の単位が価値を測れておらず、しかも測るのは買い手である

    クロール回数は価値の尺度にならないとCloudflare自身が認め、Pay Per Useへ移行しましたが、そこでは「使用」の定義も価格も使用回数の報告もAI企業側が行います。Google・Microsoft・Briaも同じ。出版社から見れば「ブラックボックス」。支払いを断ってもAI利用は止まらないGoogleの設計は、市場ではなくプラットフォームによる裁量的配分です。

  5. 規格は増えたが、署名する買い手がいない

    RSLに1,500団体、TollBitに7,000サイト、SPURに80団体、IAB CoMPは「経済モデルを定義しない」。IETF aipefの草案は失効し、robots.txt無視は3.3%から30%へ。供給側が語彙を揃えても、需要側が黙っていれば「頼み」に過ぎません。標準の乱立は、法務を持たない中小ほど負担になります。

  6. 法は三極化し、それは各国の産業政策の鏡である

    米国はフロンティア企業を抱え「学習は無料」で守る(司法省は国家安全保障と競争力を理由に)。欧州はフロンティア企業を持たず権利者が強いから報酬権へ(GEMA連勝、欧州議会決議、欧州委の協議)。日本は「機械学習天国」を維持しつつ、ソフトローと競争法で権利者をなだめる。インドだけが「選択権なしの強制ライセンス+法定ロイヤルティ」という第4の道を提案している。「適切な対価」の法的定義は、自国に誰がいるかで決まります。

  7. 核心は「学習」と「出力(RAG・要約)」の分離に移った

    米国の裁判所は学習をフェアユースとしつつ、海賊版入手と代替的出力を罰する。Cohere事件は「逐語でなくとも表現構造を映す要約」を侵害たり得るとした。ミュンヘンは記憶を複製と見た。日本の3紙訴訟も全てRAG。ジャーナリズムをめぐる対価の戦場は、過去の学習ではなく、今朝の記事をどう要約し誰に見せるかにある——そしてここは、技術的に帰属が可能な層でもあります。

  8. 帰属技術は「貢献」を測れておらず、ゲーム可能である

    学習時の帰属は近似で、1%のデータ提供者が取り分を2〜8倍に水増しできる。価値の大半は記憶されない部分にあり(In-Run Shapley)、類似度はロイヤルティの基準として不適(Deng ら)。それでも全ベンダーが式を非公開にし、STIM自身が学習分を均等割にフォールバックさせる。「正確な帰属に基づく公正な配分」は、現時点では技術の約束であって現実ではありません。

  9. 課徴金・集中管理・報酬権の議論は、「同意」と「報酬」の二者択一を迫っている

    英国の協議で「全てライセンス」88%・「オプトアウト付き例外」3%。STIMは作品ごとのオプトイン。一方でインド・Open Future・欧州議会調査は「拒否権のない報酬権こそ唯一スケールする設計」と言う。EFFとCreative Commonsは「著作権はこの釘のハンマーではない」とし、独禁法・労働法・直接の公的資金を推す。クリエイターが望む「同意」と、制度が実装できる「報酬」は、まだ和解していません。

  10. 情報生態系は縮小している——そして「払う」だけでは止まらない

    1年で主要コーパスの上位ドメインの20〜33%が学習を拒否し、縮小はニュースとフォーラムで最速。Deezerの新着の50%超がAI、Stack Overflowの質問は2008年水準、Wikipediaの人間閲覧は−8%。先にAIにライセンスしたストック業界は、そのAIに本業を置換されつつある。対価は補償であって、置換への保険ではない。「適切な対価」の最終的な基準は、人間の取材・執筆・編集が続けられる生態系が残るかどうかであり、それは1記事いくらの問題を超えています。

制度モデルの採点(四つの基準で)

モデル使用との結びつき個人への到達透明性・監査ロングテール包摂一言評
二者間の定額ライセンス★☆☆★☆☆☆☆☆☆☆☆最も金が動き、最も不透明
プラットフォームの従量プログラム(Google、PCM、Comet Plus)★★☆★☆☆★☆☆★★☆使用に近づいたが、計測は買い手の自己申告
中立マーケットプレイス(TollBit、ProRata、Redpine)★★★★☆☆★★☆★★☆設計は良いが買い手が来ない
集団ライセンス(STIM、GEMA、CCC)★★☆★★☆★☆☆★★★長い尾に届くが、配分がブラックボックス化しやすい
強制ライセンス・法定ロイヤルティ(インド案)★☆☆★★☆★★☆★★★全員に薄く、拒否権はない
デプロイ時課徴金(Open Future)☆☆☆★☆☆★★☆★★★最も実装しやすく、最も使用から遠い
労働協約(SAG-AFTRA、Le Monde 25%)★★☆★★★★★★★☆☆個人に確実に届く唯一の経路、ただし組合のある職種のみ
検索時帰属+公開式+台帳(まだ存在しない)★★★★★☆★★★★★☆技術的に可能で、誰も出荷していない

4. 起業家の総括どこで金が動き、どこで死に、どこが空いているか

4.1 2026年の経験則:金が動く3条件、死ぬ3パターン

金が動いた条件

(i) 買い手がプラットフォーム自身——Google(400媒体+約100サイト)、Perplexity、Microsoft Copilot、Meta、Amazon。自社製品のために買うので需要が確実。

(ii) 既存の調達関係に相乗り——Snowflake(クレジットで払う金融機関、6桁契約)、Factiva(企業契約20件)、Redpine(研究機関・企業のAPI予算)。

(iii) 本当に希少な供給——未公開映像(Troveo 2,000万ドル、1分1〜4ドル)、メジャーの楽曲カタログ、Reddit(年6,000万ドル)。

死んだパターン

中立の「みんなの市場」——供給は集まるが買い手が来ない:Human Native(売却)、Created by Humans(価格未定)、RSL(AI署名0)、Story Protocol(創作IPを放棄)。

消費者向け記事単位課金——Blendle、Flattr、Coil、Scroll、Zette(転換)。精神的取引コストと束ね売りの壁。

相手の製品が死ぬ契約——Disney–OpenAI(Sora終了)、Lionsgate–Runway、Perplexity広告廃止でプログラム宙吊り。

4.2 単価のベンチマーク(交渉と設計のアンカー)

€0.25
消費者が歴史的に払った1記事の典型価格(Blendle)。手数料30%
約$4/人/月
月5ドル購読の80%を出版社に回したときのプール(Comet Plus)
¥16,500
大手紙が主張する1記事のAI企業向け価値(読売 v Perplexity)
0.12円/PV
日本のポータルが払う既存の相場(公取委)
約0.6/記事
Redpine科学コレクションの単価(0.5/1,000トークン)で1,200トークンの記事を買った場合。通貨単位は要確認
$3,000
書籍1冊の司法的「価格」(Anthropic和解)
$1–5M/年
中堅出版社がAI企業から得る年額(OpenAIの提案レンジ)
50% / 80%
回答エンジンの出版社分配率(ProRata・NewsGuard/Comet Plus)

4.3 空白地帯:誰も出荷していない10の製品領域

  1. 検証可能な使用報告(Verifiable Telemetry)

    Pay Per Use・PCM・Bria・Googleは全て買い手の自己申告。AI側がWeb Bot Authの鍵でイベントに署名し(SPUR形式)、出版社側が自分の402/200ログや配信ログと突合して抜き打ち監査できる層。「自己申告問題」を解く者が、従量市場の信頼基盤を握ります。

  2. 検索時帰属のレシート(RAG Attribution Receipt)

    RSLの「推論単位の支払い」には計算方法がありません。RAGなら可能:検索スコア+回答と引用文の重なり(ContextCite型除去、またはCitations APIの文字位置)から回答ごとの寄与率を出し、ProRata型の帰属バーを公開の式で出す。「50%を寄与率で分けました」を証明付きで渡せる最初の製品。

  3. ロングテールの価格発見(Rate Card / Price Index)

    「ジャーナリズムがAI企業にいくらの価値か、誰も知らない」。出版社の希望価格と買い手の入札、TollBitの動的CPM、Cloudflareの買い手提示価格、Redpineのトークン単価を集約し、コンテンツ種別・鮮度別の公開価格指数を出す。日本なら0.12円/PVを起点に。

  4. エージェント向けpreview→confirmの標準化

    Redpineの型(無料ティーザー→明示的なcost_to_unlock→idempotentなレシート→7日再確認)を、MCPネイティブな402フローとして一般化。エージェントが「¥Xでこの記事を解錠しますか」と利用者に聞き、許諾を引用に添付する。

  5. 署名欄(byline)単位のパススルー

    全プログラムは出版社に払い、記者・フリーランス・写真家・通信社には届かない。記事単位の権利メタデータ(C2PA/RSL/ID3型)に寄稿者の取り分を埋め込み、支払いを署名欄まで自動分割する。音楽のAFM訴訟を先回りする設計。

  6. 相互運用シム

    出版社は1つの権利ファイルを書けばRSL license.xml・Content-Signal・aipref Content-Usage・CC Signals・CoMPトークンに展開され、クローラーは1つのライブラリで全部を尊重する。地味で、未着手で、全員が欲しがる。

  7. 鮮度・差分の配信(Freshness Delta)

    良質ボットのクロールの半分以上は変更のないページの再取得。出版社が更新通知をpushし、買い手は「再取得」ではなく「配信された差分」に払う(CloudflareのAI Index構想)。クロールの無駄を消し、課金単位を価値に近づける。

  8. 退屈な精算配管(Settlement Plumbing)

    数百万件のマイクロイベントを月次明細に集約し、消費税・VAT・インボイス制度に適合させる。x402もL402もここを解いていない。日本の出版社にとって「使える対価」になる最後の1マイル。

  9. 「検索は可・学習は不可・エージェントは条件付き」の運用ツール

    混合目的クローラー(Google)は、出版社に「AIアクセスか検索の可視性か」の二択を迫る。小規模出版社が三分類を表明し、流入への影響を測れるツール(Cloudflare Business Insights相当)は、Cloudflare外ではほぼ存在しない。

  10. 日本の集団リスティング(Tier-3包摂)

    地方紙・専門誌・非英語・音声は世界のTier-1契約に不在。日本の中小媒体を束ね、共通のテレメトリ+分配エンジンで一つのカタログとしてAI買い手に提示する——NMA×Bria、RSL、CLAの日本版。文化庁の3億円実証と接続できる。

4.4 持続する堀と、避けるべきリスク

堀になるもの

鮮度(今朝の記事は学習データでは代替できない)、顧客関係(利用者の嗜好・予算・信頼を握る)、引用元であること(AI回答の中で名前が出る側に立つ)——Forbes(2026/10/22)の整理と一致します。加えて監査可能な台帳と公開の分配式は、競合(Google・Perplexity・Microsoft)が構造的に出しにくい資産です。

リスク

相手の製品の寿命(Sora、Perplexity広告)、単価の下落(1生成数分の1セント、年100〜500万ドル)、権利データの汚さ(Bartzの共有権者紛争)、計測の崩壊(GPT-6のリンク仕様変更で参照流入が一夜で−46%)、法的不確実性(2027年まで主要判決が続く)。契約は「学習料」でなく「アクセス料」で、最低保証・解約金・データ削除条項を。

4.5 アプローチの事業性マトリクス

アプローチ実装可能性(ハッカソン規模)買い手の有無防御性規制の追い風総合
許諾ニュースAPIの上に消費者向けエージェント(キャスター型)★★★★★☆(消費者、Google・Pulseと競合)★★☆(分配台帳・UXで差別化)★★★(日本のRAG訴訟・コード準拠)★★★
検索時帰属レシート(B2B SDK)★★★★★☆(回答エンジン・出版社)★★★★★★(透明性義務)★★★
署名付きテレメトリ・監査層★★☆★★☆(出版社連合)★★★★★★★★☆
中立マーケットプレイス(新規)★★☆★☆☆★☆☆★★☆★☆☆
学習時帰属エンジン☆☆☆★★☆(レーベル・CMO)★★★★★☆★☆☆(研究・大手の領域)
消費者向け記事単位課金(人が選ぶ)★★★★☆☆☆☆☆★☆☆☆☆☆(20年の失敗史)
日本の集団リスティング+分配エンジン★☆☆(長期)★★☆★★★★★★(文化庁実証・公取委)★★☆(会社としては有望)

5. ハッカソンへの示唆「あなただけのニュースキャスター」をこの地図の上に置く

当日の進行・Lovable実装・審査Q&Aは別資料「Redpine 朝7時作戦帳」にまとまっています。ここでは、この調査から導かれる位置づけ・設計の根拠・審査員に見せる数字だけを整理します。

5.1 競合の中での位置

製品許諾支払い記事単位のレシート利用者の予算上限音声の朝ブリーフ分配式の公開
Google News 音声ブリーフィング(400媒体)○○(額非公開)××○×
ChatGPT Pulse△(契約社のみ)△××△×
Perplexity Comet Plus△○(80%)×××△(3指標、重み非公開)
NewsGuard AI○(12,000ソース)○(50/50)×××△
Particle○○(条件非公開)××××
Copilot Daily○○××○×
ニュースキャスター案(Redpine+Lovable)○○(従量、preview→confirm)○○○○

出荷済みの製品で「(1) 毎朝の音声ブリーフ、(2) 記事単位の購入と出版社ごとのレシート、(3) 利用者が設定する予算上限」を同時に持つものはありません。最大の既存脅威はGoogleの音声ブリーフィング(2026/10)、最も近いポジショニングはNewsGuard AI(信頼+50/50)です。

5.2 設計判断と、その根拠

設計判断根拠(本調査から)
人には定額、エージェントには従量+日次上限Szabo:委任は上限付き予算か定額でのみ成立。記事・日パスを検討する非購読者は5%。Blendle等の失敗史
買うのは実際に読む3〜6本だけ、残りは無料スニペットRedpineの単価(約0.6/記事)では5本×30日は月額に収まらない。Blendleの「すぐ閉じれば返金」はUXの先例。「コスト/ブリーフ」をKPIに
分配台帳を画面に出す(「今週Reutersに¥X、日経に¥Y」)Perplexity・Google・Microsoftは揃って「支払額非公開」で批判されている。SPURテレメトリ・RSLと整合
逐語引用+元URL、見出しを書き換えないTow Center:出典誤り60%超。NewsGuard:虚偽反復35%。Appleの要約停止。引用精度をサンプル監査して数字で示す
金とクリックの両方で払うAI回答から出典へのクリックは4%。「出版社サイトで読む」ボタンを計測し、出版社向けに「記事単価+送客」を報告する(ProRata・Googleの出版社向け訴求と同じ構造)
初期設定=ソース5つ+トピック5つ+予算、無限フィードではないGoogle Preferred Sources(約9万ソース、指定ソースのクリック約2倍)、Particleのトピックフォロー。賛否両論表示は政治ネタの多様性に
スクレイプしない、未許諾ソースは要約しないモードを持つ日本の3紙訴訟(RAG・robots.txt)、Cohere「代替的要約」、Amazon v Perplexity。「許諾APIのみ」は法的堀であり審査員向けの物語
寄与率で払う、引用回数では払わない。均等割の「在庫プール」も別に持つ二値の引用単位は引用詰め込みに弱い(Perplexity)。STIM・LANDR・ElevenLabsの二段構え
参照・課金ログを自前で保持し、出典・利用ログの開示に答えられる形にするプリンシプル・コード原則1〜3(2026/8)、GPT-6で参照計測が崩壊した教訓
音声(News Connect)は対価4類型を意識する日俳連ガイドライン(2026/10/15):学習料・生成AI使用料・追加使用料・多言語化使用料。日本で最も具体化した料率構造

5.3 審査員に見せる数字

¥/ブリーフ
1回の朝ブリーフで出版社に払った金額と、利用者月額に対する出版社分配率(基準:50% ProRata/80% Comet Plus/70% Offerwall)
購入転換率
preview→confirm:プレビューした記事のうち購入した割合、返金・放棄率
引用精度
監査サンプルでの出典正答率(基準:AI検索は60%超が誤り)
送客率
出版社サイトへのクリック率(基準:AI回答は4%)
ソース多様性
1ブリーフあたりの許諾媒体数、政治的バランス
生成コスト・遅延
1ブリーフの原価と生成時間

5.4 ピッチで使える3行

「Googleは400媒体の記事で音声ブリーフィングを作り始めましたが、1記事いくら払ったかは誰にも見えません。私たちは、あなたの朝7時のニュースがどの記事を、いくらで、誰から買ったかを毎朝レシートで見せます。」

「読者は記事単位で払いたくない——これは20年の失敗史が証明しています。だから人は定額で払い、エージェントが上限予算の中で記事単位に買う。Redpineのpreview→confirmはそのために設計されています。」

「日本では学習は無料ですが、検索時の無断利用は訴訟中で、政府はコードで出典とログの保持を求め、公取委は配分の不透明さを問題にしています。許諾済み・課金済み・出典保持のRAGは、この三つに同時に答える唯一の設計です。」

5.5 落とし穴

  • 単価の確認を怠らない。ニュースコレクションの1,000トークン単価と通貨単位を、デモ前にRedpineのダッシュボードか運営に確認する。科学コレクションの0.5をそのまま前提にしない。
  • 「対価還元」を出版社への支払いで終わらせない。審査員が「クリエイター」と言うとき、記者・ポッドキャスター個人を指している可能性がある。署名欄単位の分割(将来機能でも)を一言入れる。
  • Googleとの差を「要約の質」で語らない。勝てるのは「お金の見える化」と「利用者の統制(予算・ソース選択)」。
  • 単独アプリで終わらせない。Artifactの教訓。LINE・Slack・スマートスピーカーなど「朝が起きる場所」への出口を一つ示す。

付録A. 全事例インデックス(検索・絞り込み可)本文で触れた解決策を一行ずつ。名称・仕組み・金額で検索できます。

名称分類層仕組み(要点)金額・実績状態 2026/10
News Corp – OpenAI直接契約B+D現金+OpenAIクレジット、学習+表示5年2.5億ドル超稼働
News Corp – Meta直接契約B+C定額年額、学習+リアルタイム年最大5,000万ドル×3年2026/3締結
NYT – Amazon直接契約B+CAlexa要約+Amazonモデル学習年2,000〜2,500万ドル2025/5
Reddit – Google / OpenAI直接契約B+CAPI/データ、動的価格を模索年約6,000万/約7,000万ドル(後者未確認)Google更新交渉中
Dotdash Meredith – OpenAI直接契約B+D一括+変動キッカー年1,600万ドル以上2024/5
Axel Springer – OpenAI直接契約B+D年額+アーカイブ一時金年数千万ユーロ2023/12
FT – OpenAI / Google / Microsoft / ProRata直接契約B+D年額定額OpenAI年500〜1,000万ドル(報道)日経傘下
Le Monde – OpenAI / Perplexity / Meta直接契約B+D定額、記者に25%非公開唯一の記者分配モデル
AFP – Mistral直接契約Cリアルタイム+アーカイブ、学習なし、記者年275ユーロ数百万ユーロ(報道)2025/1
Axios – OpenAI直接契約D地方ニュースルーム4拠点の新設資金非公開2025/1
Times of India / Indian Express – OpenAI直接契約D帰属付き表示、多言語約500万/約300万ドル/年(未確認)2026/9
Folha/UOL – OpenAI直接契約D訴訟を和解→ライセンス非公開2026/5
HarperCollins – Microsoft直接契約B著者オプトイン、出力制限1冊5,000ドル/3年、著者50%2024/11
Informa/T&F – Microsoft直接契約B非独占、著者オプトアウトなし1,000万ドル+年次2024/5
Wiley – テック2社ほか直接契約B→C学習→RAG購読へ、オプトアウト拒否累計1.1億ドル超FY2026
Cambridge UP / Bloomsbury直接契約B著者オプトイン非公開(CUP約20%印税は未確認)2024〜
Shutterstock – OpenAI等直接契約Bデータセット販売、Contributor Fund2023年1.04億ドル、2026上期−28%縮小
Getty – Nvidia / Perplexity直接契約B/D生成AI学習/表示のみ非公開Getty財務再編中
Wikimedia Enterprise直接契約C有料API(Amazon・Meta・Microsoft・Mistral・Perplexity)非公開2026/1拡大
Stack Overflow – Google / OpenAI直接契約B+COverflowAPI、帰属あり投稿者分配なし非公開投稿者反発
Apple – Siri向け出版社交渉直接契約C使われたときだけ払う変動報酬予算1億ドル以上2026/8交渉
Google AI貢献パイロットPF主導D生成に「有意に貢献」で支払い、Search Console1,000ドル未満〜年100万ドル超/社約100社
Google News AIパイロットPF主導C記事概要・音声ブリーフィング年1桁百万ポンド(Guardian/FT)400媒体超(2026/10/15)
Google Preferred Sources / OfferwallPF主導E利用者のソース指定/リワード広告70%・Supertab少額課金約9万ソース指定稼働
Microsoft Publisher Content MarketplacePF主導C出版社が条件設定、従量、Copilot・Yahooが買い手非公開2026/2正式
Microsoft Copilot DailyPF主導C許諾5社の音声ニュース非公開2024/10
Perplexity Publishers' ProgramPF主導D引用時の広告収益2桁%非公開2026/2広告廃止で宙吊り
Perplexity Comet PlusPF主導E月5ドルの80%、訪問・引用・エージェント操作プール4,250万ドル支払額非公開
Meta AI 商業データ契約PF主導Cリアルタイム回答に出典・リンクNews Corp年最大5,000万ドル2025/12〜
Amazon Alexa+/Rufus/NovaPF主導C定額(NYT)・従量(Reach)200社超と主張個別契約
OpenAI 広告・PulsePF主導D広告の出版社分配なし、Pulseの支払い未開示—2026
Brave Creator Contribution ProtocolPF主導DBATでクリエイターにマイクロペイメント(構想)—AIパートナーなし、被訴
Naver AI Briefing クリエイターインセンティブPF主導D引用UGC作成者に還元—韓国、2026
Cloudflare Pay Per Crawl / Pay Per Use市場・仲介A→C402課金→買い手が使用を定義・自己申告1日10億件の402PPU β 2026/9/30
TollBit市場・仲介A動的CPM、出版社100%7,000サイト、20%が収益化日本参入2025/10
ProRata / Gist市場・仲介D主張単位の帰属、収益50%500〜700媒体、7,500万ドル調達「意味ある収益なし」
Snowflake Cortex Knowledge Extensions市場・仲介C企業RAG、クレジット払い、Snowflake取り分なし17社、6桁契約2026/6
Dow Jones Factiva AI市場・仲介CB2B DBにGenAI権GenAI契約約20件稼働
Bria × News/Media Alliance市場・仲介D帰属エンジン、50/50非公開2026/3
Dappier市場・仲介CRAG市場、エージェント店舗(x402・カード)非公開稼働
ScalePost / Sphere市場・仲介B/C市場+分析(取り分約15%)/出版社100%Sphere 1,000万ドル相当登録初期
Human Native市場・仲介B学習用データセット仲介売上前Cloudflare買収2026/1
Created by Humans市場・仲介B著者のオプトイン市場著者100人超、1,100万ドル価格未定
Troveo / Protege / Calliope / Defined.ai市場・仲介B映像・音声素材の直接仕入れTroveo累計2,000万ドル、1分1〜4ドル稼働
Redpine Connect市場・仲介C許諾データAPI、1,000トークン単価、preview→confirm2,000億トークン、50社超、シード800万ドルハッカソン基盤
Supertab Connect市場・仲介ARSL準拠のCDN層ライセンス例示0.002ドル/リクエスト—
Zette(B2B転換)市場・仲介B消費者クレジット→AI向けニュースデータ—プレローンチ
RSL 1.0 / RSL Collective標準Grobots.txtからlicense.xml、推論単位課金の語彙支持1,500団体AI署名0
IAB Tech Lab CoMP標準GIngest API・トークン・市場層—v1.0確定2026/4
SPUR Content Telemetry Standard標準G取得・グラウンディング・引用・提示・接触の報告形式80団体超v1.0 2026/10/2
IETF aipref標準GContent-Usageヘッダー—添付草案失効2026/5
Cloudflare Content Signals / TDMRep / CC Signals / llms.txt / ai.txt標準G権利表明の語彙群llms.txt採用約10%CC Signalsは条件付きアクセスへ転換
Web Bot Auth / C2PA標準Gクローラー署名/出所証明—課金の前提
EU AI Act 学習データ要約テンプレート標準GGPAIの公開要約—執行2026/8/2〜
x402 / x402 Foundation決済FHTTP 402+ステーブルコイン1.69億件、実商取引1日2.8万ドルLF傘下2026/4
Cloudflare Monetization Gateway / AWS WAF Monetize決済Fエッジでx402課金—β/GA 2026/6
L402 / Lightning Agent Tools決済Fmacaroon+Lightning、委任上限取引量非公開2026/3
Stripe Agentic Commerce / Visa / Mastercard / AP2決済Fエージェント商取引レール—コンテンツ実装例なし
Story Protocol → DATA Foundation決済FプログラマブルIP→データ来歴へ転換1.34億ドル調達創作IP路線放棄2026/6
ProRata 帰属アルゴリズム帰属技術D主張単位の出典比率—式非公開
Sureel AI帰属技術B学習時帰属ベクトル、STIM必須資産1,000万件WMG買収2026/6
Musical AI / Beatoven帰属技術Bロイヤルティシート、収益30%300万楽曲稼働
Bria 帰属エンジン帰属技術B+D生成ごとの帰属ベクトル非公開稼働
Vermillio TraceID / Loti帰属技術D肖像・IP追跡とライセンス1,600万ドル(Sony Music)稼働
Data Shapley / 影響関数 / TRAK / AbU / 高速帰属帰属技術B学習データ帰属の研究系譜高速版18.7ms/クエリ順位のみ
In-Run Data Shapley / 経済学的解決(Wang ら)帰属技術B学習中のシャープレイ、所有者単位ロイヤルティPileの16%は負の価値分割でゲーム可能
帰属への敵対的攻撃(Wang, Deng ら)帰属技術B1%提供者が取り分200〜650%水増し—2024
Copyright Traps / データ透かし / DE-COP帰属技術B使用の証明GPT-4o有料本AUROC 0.82訴訟インフラ
ContextCite / Anthropic Citations API帰属技術C検索時の寄与率・文字位置約32回の除去で推定オープンソース/提供中
Deezer AI検知 / Audible Magic / Pex帰属技術検知AI判定・指紋日次9万曲、99.8%外販2026/1
Data Provenance Initiative帰属技術Gデータセット監査、同意の危機上位ドメイン20〜33%が制限2024
STIM 集団AIライセンス集団管理B+D学習均等割+出力帰属、作品ごとオプトイン料率非公開2025/9〜、AI権利カテゴリー2026/6
GEMA 二本柱モデル集団管理B+D純収益30%+最低料金—OpenAI・Sunoに勝訴
CCC AI Systems Training License / 従量AI権集団管理B/C集団ライセンス、要約から従量非公開2026/3
CLA(英)/ Copyright Agency(豪)集団管理Bオプトイン集団ライセンス/会員協議非公開2026
News/Media Alliance(ProRata・Bria・Cohere訴訟)集団管理D加盟2,200社のオプトイン枠組み—稼働
Dataset Providers Alliance集団管理Bオプトイン既定の立場表明—2024〜
SAG-AFTRA / WGA 協約集団管理労働デジタル複製:作成1日分+相当日数+残余全文公開2023〜2025
JASRAC「断る権利」要求集団管理G30条の4改正要求、クリエイター反対54%—2026/6/11
日本俳優連合 音声生成AIガイドライン集団管理B+D対価4類型、同意1年—2026/10/15
米著作権局 Part 3 / 司法省意見書法制度—市場を待つ/学習はフェアユース—2025/5/2026/9/2
米法案(TRAIN、NO FAKES、COPIED、Hawley)/州法(ELVIS、CA AB 2013)法制度—開示・肖像権・透明性NO FAKES法定賠償5,000〜25,000ドルNO FAKES上院司法委可決2026/6
EU AI Act 53条 / GPAI行動規範法制度—著作権方針・学習要約、robots.txt尊重罰金最大3%執行2026/8/2〜
欧州議会 Voss決議法制度—報酬(過去分含む)、使用推定、EUIPO登録、RAG同意460–71–882026/3/10
欧州委員会 著作権協議法制度—集団ライセンス・公正補償を選択肢に—2026/9/29〜11/3
英政府報告 / 貴族院報告法制度—現状維持・市場主導/ライセンス優先・透明性義務協議でライセンス88%2026/3
インド DPIIT「One Nation One License One Payment」法制度—強制包括ライセンス+法定ロイヤルティ、CRCAT—政府回答H2 2026
ブラジル PL 2338 / 豪TDM否定 / 韓AI基本法 / 中国表示義務法制度—報酬権案/ライセンス既定/無言/学習寛容—2024〜2026
課徴金・データ尊厳・ニュース交渉法(提案)法制度—Open Future、Lanier & Weyl、豪・加・カリフォルニアMID 70%案採用政府なし
著作権法30条の4 / 文化庁考え方・チェックリスト法制度—学習は無許諾可、有償DB・robots.txt回避はただし書—改正なし
内閣府 プリンシプル・コード法制度—3原則、comply or explain、届出パブコメ2,161件2026/8/24決定
知財推進計画2026 / AI基本計画 / AI推進法法制度—対価還元枠組みの促進、robots.txt課題整理、声の保護—2026
文化庁 対価還元データ流通促進事業法制度B有償データセットのモデル事例要望3億円令和7年度補正〜
公正取引委員会 ニュース配信調査 / AI検索調査法制度—1,000PV 124円、AI検索6社を調査370社アンケート報告書時期未定
法務省 声・肖像報告書 / 東京地裁判決 / 産構審法制度—声をパブリシティ権で保護、不競法改正の2方向—2026/8〜10
Bartz v. Anthropic 和解訴訟B海賊版入手の清算、著者/出版社50/5015億ドル、1作品約3,000ドル初回支払い2026/11/15
読売 / 朝日・日経 v Perplexity訴訟CRAG、robots.txt、不競法21.68億円/各22億円、1記事16,500円初弁論2026/5
GEMA v OpenAI / v Suno訴訟B記憶=複製、TDM例外外、CMOライセンス損害額未定控訴中
Thomson Reuters v Ross(第3巡回区)訴訟Bフェアユース否定、学習データ市場を認定—2026/9/29維持
In re OpenAI(NYT等)訴訟B+D出力代替理論、2,000万ログ数十億ドル請求SJ反論2026/11/6
NMA加盟社 v Cohere訴訟D「代替的要約」は侵害たり得る—証拠開示中
Dow Jones / Britannica / NYT / CNN / Reddit v Perplexity訴訟CRAG・DMCA 1201—公判2027
UMG/Sony/WMG v Suno・Udio訴訟B和解→ライセンス(Sonyは係争)61,026作品へ拡大申立て処分的申立て2027/4
Penske / Chegg v Google訴訟D独禁法ルート—却下2026/9/30
Getty v Stability(英)/ Kadrey v Meta / ANI v OpenAI / Concord v Anthropic訴訟B二次侵害否定/フェアユース/フェアディーリング/30億ドルANIライセンス提示750万ドル2026
2026年新規提訴(USA Today、地方紙30社超、Alden、カナダ紙 v Anthropic、DPCMO、Perfil、News Corp v Brave)訴訟——USA Today 2.5億ドル、Alden 100億ドル超係属
Fairly Trained 認証倫理モデルB許諾データのみの認証12社・5モデル音楽中心
Adobe Firefly / Bria / Getty Generative AI / Shutterstock ImageAI倫理モデルB許諾画像のみで学習、投稿者還元Adobe年1回ボーナスストック業界は苦境
Suno v6 / Udio 壁付き庭 / KLAY / Spotify AI追加プラン / ElevenMusic倫理モデルBメジャー許諾曲のみで学習、DL上限、オプトインSuno Pro 10ドル/20DLSuno v6 2026/9出荷
Common Pile / Comma、Common Corpus、Apertus、KL3M、Harvard IDI倫理モデルBオープン・PDデータのみ(払わない公共オプション)約2兆トークンが天井常識タスクで劣後
Moonvalley Marey / Asteria倫理モデルB許諾映像のみの動画モデル非公開2025/7
Particle消費者製品C+E許諾フィードで全文配信、広告なし無料、分配非公開稼働
NewsGuard AI消費者製品D12,000ソース、引用先と50/50価格非公開2026/6
Google News 音声ブリーフィング消費者製品C400媒体の許諾コンテンツ非公開2026/10
ChatGPT Pulse / Apple Intelligence要約 / Copilot Daily / Meta AI / Alexa+消費者製品C朝ブリーフ・要約・音声—Apple要約は免責付き復活
Ground News / Yahoo News / Artifact(閉鎖)消費者製品—リンク集約、支払いなしGround News 8.33ドルArtifact 2024/1閉鎖
SmartNews / SmartNews+消費者製品—3,000媒体、AIまとめ有料10万加入者2025/7
Brave / Arc Search / Dia / エージェント型ブラウザ消費者製品—要約、支払いなし—Brave被訴
Blendle少額課金史E記事0.09〜1.99ユーロ、30%5年で出版社へ800万ユーロ2023年終了
LaterPay → Supertab少額課金史Eタブ・時間パス、80%Google Offerwall統合稼働
Axate / Fewcents / Zette少額課金史Eウォレット型—小規模/転換
Flattr / Coil / Scroll少額課金史E月額の分配—全て閉鎖
Apple News+ / Google News Showcase少額課金史E50%時間按分/3年10億ドル—稼働
cakes / note / 新聞電子版少額課金史E週150円読み放題/記事価格設定/購読日本の有料率10%cakes 2022終了
note「AI学習対価還元プログラム」日本Bオプトイン、PF手数料控除後に分配1,200名、総額500万円超2025/8/1
NewsPicks・みんかぶ × Perplexity日本D引用時の広告分配非公開2024/12、広告廃止で宙吊り
日経「NIKKEI KAI」(MCP)日本C自社B2B RAG、ライセンスせず自作—2026/9/1
TollBit Japan(JBpress、BI.Garage)日本Apay-per-crawl—2025/10/16
Yahoo!ニュース等 配信許諾料日本EPV連動1,000PV 124円公取委フォローアップ中
CoeFont / VOICEVOX / Mantra・オレンジ / 日販→Anthropic(未確認)日本B許諾音声の利用料/AI翻訳/書籍販売——
日本新聞協会 声明(2025/6、2026/4)日本Grobots.txt法的義務化、AI検索オプトアウト不能は優越的地位濫用—公取委調査へ

付録B. 年表 2023–2026対価をめぐる主要イベント(青点は日本)

  • 2023/7AP–OpenAI、世界初のニュース学習ライセンス。Shutterstock–OpenAI 6年延長。JASRAC「生成AIと著作権に関する基本的な考え方」
  • 2023/8新聞協会・雑誌協会・書協・写真著作権協会の4団体共同声明
  • 2023/9Getty Generative AI、Adobe Firefly投稿者ボーナス開始。公取委ニュース配信実態調査(1,000PV 124円)
  • 2023/10Canva 2億ドルのクリエイター補償。SACEMがTDMオプトアウト。Concord v Anthropic提訴
  • 2023/12Axel Springer–OpenAI(年数千万ユーロ)。NYT v OpenAI/Microsoft提訴。Apple が出版社に5,000万ドル超を打診と報道
  • 2024/1Fairly Trained発足。SAG-AFTRA–Replica Studios
  • 2024/2Reddit–Google(年6,000万ドル)。Stack Overflow–Google
  • 2024/4FT–OpenAI。EU AI法成立(5月)
  • 2024/5News Corp–OpenAI(5年2.5億ドル超)、Dotdash–OpenAI、Vox・Atlantic–OpenAI、Reddit–OpenAI、Informa–Microsoft、Stack Overflow–OpenAI
  • 2024/6Le Mondeが記者への25%分配で労使協定。RIAA系レーベルがSuno・Udioを提訴。Particle Series A(Axel Springer)
  • 2024/9Lionsgate–Runway。GEMA二本柱モデル。DPA立場表明
  • 2024/10Microsoft Copilot Daily有料パートナー。Reuters–Meta。Dow Jones v Perplexity提訴。TollBit Series A
  • 2025/1AFP–Mistral。AP–Google Gemini。Axios–OpenAI(ニュースルーム資金)。Anthropic Citations API。Deezer AI検知開始。Created by Humans正式版
  • 2025/2Thomson Reuters v Ross 地裁判決(フェアユース否定)。NMA加盟14社 v Cohere。Schibsted・Guardian–OpenAI。英「Make It Fair」
  • 2025/3Tow Center:AI検索の出典誤り60%超。NMA–ProRata枠組み。Bria Series B。仏SNE等 v Meta
  • 2025/5米著作権局Part 3公表前版(翌日に登録官解任)。NYT–Amazon(年2,000〜2,500万ドル)。Le Monde–Perplexity。CJEUにLike Company付託
  • 2025/7Cloudflare Pay Per Crawl・既定ブロック開始。Pew:AI Overviewでクリック15%→8%。Gannett–Perplexity。Condé Nast・Hearst–Amazon。EU GPAI行動規範・要約テンプレート。米AI行動計画。SAG-AFTRAゲーム協約批准。Moonvalley Marey
  • 2025/9RSL発表(9/10)、STIM集団AIライセンス、ProRata Series B、Penske v Google、Britannica v Perplexity、Apertus公開、Bartz和解予備承認、Tilly Norwood騒動、Suno 24.5億ドル調達
  • 2025/10UMG–Udio和解(10/29)、UMG–Stability、Getty–Perplexity、Comet Plus提供開始、Reddit v Perplexity、豪州がTDM例外を否定(10/26)、英CMAがGoogleにSMS指定、TollBit日本参入(10/16)、Spotify「アーティストファーストAI」
  • 2025/11GEMA v OpenAI 勝訴(11/11)、Getty v Stability英判決(11/4)、WMG–Udio・WMG–Suno和解、KLAY 3大メジャー許諾、Microsoft PCM試行(People Inc・USA Today・AP)、Lemley & Noti-Victor論文、Cohere却下申立て棄却、NYT・Chicago Tribune v Perplexity
  • 2026/1Cloudflare が Human Native買収(1/15)、Wikimedia Enterprise拡大、Merlin–Udio、Concord II(30億ドル)、OpenAI広告開始、CA AB 2013施行、韓AI基本法施行(1/22)、ChatGPTログ命令維持
  • 2026/2Microsoft PCM正式開始(2/4)、Perplexity広告廃止(2/18)、FT–Google、DPCMO v OpenAI、ElevenLabs 110億ドル、Runway 53億ドル、SPUR設立、インドDPIIT協議締切(2/6)

付録C. 未確認・要検証リスト本文で「未確認」「報道」と付けた主な項目。当日までに確認できれば精度が上がります。

  • Redpineのニュースコレクション(News Connect・ADDIX・東武)の1,000トークン単価と通貨単位——ハッカソン用キーのlist_collectionsかダッシュボード(app.redpine.ai)で確認。本資料の「約0.6/記事」は科学コレクションの単価からの換算。
  • UMG–Udioの1生成0.002〜0.005ドル(Forbes経由とされるが、信頼性の低いサイトが出所の可能性)。
  • Reddit–OpenAIの年約7,000万ドル、Times of India・Indian Expressの年額、FT–OpenAIの年500〜1,000万ドル、Springer Nature–Googleの2,300万ドル、Cambridge UPの約20%印税。
  • Amazon「Content Partners」の現物払い(2026/7、単一ソース)。Microsoft PCMの全ローンチパートナー。
  • Cloudflare Pay Per Useの初期買い手名(Ceramic.ai、You.com)は二次情報。Cloudflare公式ブログは買い手を名指ししていません。
  • GEMA「PLAI by GEMA」(2026/7)の存在と内容。GEMAの30%モデルの最新版。STIM/Songfoxの料率。CCC・CLA・Copyright Agencyのライセンス詳細。
  • AFM v UMG/WMG(2026/6、セッションミュージシャンの未分配)、ElevenLabs Voice Libraryの累計約1,100万ドル、Lionsgate–Runwayの2025年報道の一次資料。
  • Like Company v Google の法務官意見(2026/9予定)の有無と内容。欧州委のオプトアウト・プロトコル合意リスト。英CMAのAI Overviews行動要件の最終状況。インドDPIITへの政府回答。ブラジルPL 2338の下院状況。
  • プリンシプル・コード届出受付開始日(2026/10/26は二次情報)と初期届出事業者。新聞協会2024/7/17声明の本文。講談社サイト掲載の2025/10/31共同声明の参加団体。
  • 日販GHD→Anthropicの書籍販売の詳細、書協AI対応契約ヒナ型の内容、Bartz和解における日本の著者の扱い。
  • ソフトバンクのPerplexity出資の有無、Google AI Modeの日本展開とオプトアウト対応、毎日・産経・共同・時事のAI企業との契約の有無。
  • 国内LLM(PFN、Sakana、NTT、SB、楽天、Stockmark、LLM-jp)の学習データ方針の一次資料。CoeFont・emamori・Skeb・pixiv・ニコニコの最新AI方針、Mantra/オレンジの原作者還元。
  • Apple News+の分配式(50%・時間按分)とNYT離脱、Scrollの70%、Factiva/Nexisの記事単価、日経電子版・NewsPicksの現行価格、cakes・noteの詳細——いずれも記憶ベース。
  • EBU/BBC調査(2025/10、AI回答の45%に重大な問題)、Similarweb ゼロクリック69%、TollBit「State of the Bots」2026年上期の比率——本文では直接引用を避けています。

付録D. 主要出典カテゴリー別。トラッカー類は継続更新されるので当日も参照できます。

継続更新トラッカー

直接契約・プラットフォーム

市場・標準・決済

帰属技術・研究

法制度・訴訟・集団管理

音楽・画像・映像・声

消費者製品・少額課金・流入経済

日本