- 株価
- 5,484円2026年10月13日
- 時価総額
- 約1.25兆円自己株式を除く
- 売上収益
- 4,296億円2025/9期
- 営業利益率
- 8.4%2025/9期、連結
- 国内店舗数
- 667店スシロー、2025/9末
- 海外店舗数
- 331店2026年8月
- ROE
- 26.3%2025/9期
- PER
- 39.5倍会社予想EPS 138.73円
01どんな会社か
FOOD & LIFE COMPANIES(以下F&LC)は、回転すしチェーン「スシロー」を運営する持株会社です。売上の9割以上、利益のほぼすべてがスシローから生まれており、この会社を分析することは、スシローという一つの業態を分析することとほぼ同義と言っていいでしょう。
スシローは1984年に大阪府豊中市で創業し、1996年に「1皿100円均一」の店を出して急成長しました。現在の基本の皿は税込120円からで、回転すし市場の売上高では10年連続で首位にあります。2017年に東証一部へ再上場し、2021年に現在の社名へ変更しました。
店の仕組み:客席のタッチパネルと、店内での調理
客は席のタッチパネルで注文し、すしはレーンで届きます。2023年からは客席のモニター「デジロー」、配膳の自動化「オートウェイター」の導入を進めており、人手を減らしながら回転を上げる設計です。すしは各店で調理しています(同業のくら寿司のようなセントラルキッチンは持たない)。そのぶん人件費は重くなりますが、鮮度で客を呼ぶ考え方です。
グループの構成
2025年9月期の売上は4,296億円です。国内スシローが62%、海外スシローが31%を占め、残りが持ち帰りすしの「京樽」と居酒屋業態の「杉玉」です。京樽は2021年に完全子会社にしましたが、2026年9月にSRSホールディングスへ売却しており、経営資源はスシローに集中しています。
沿革
- 1984年大阪府豊中市で創業
- 1996年「1皿100円均一」の1号店を兵庫県宝塚市に出店
- 2002年回転すしの総合管理システムを開発
- 2011年海外展開を開始(韓国)。回転すし業界で売上高首位に
- 2017年東証一部に再上場。居酒屋業態「杉玉」1号店
- 2018〜21年台湾、香港・シンガポール、タイ・中国本土に初出店
- 2021年京樽を完全子会社化し、社名をFOOD & LIFE COMPANIESに変更
- 2023年客席モニター「デジロー」の導入を開始
- 2026年京樽を売却。海外店舗は331店(8月)
02海外への広がり
この5年で、F&LCは国内の会社から国際的な外食企業へと姿を変えました。海外スシローの売上比率は2021年9月期の7%から2025年9月期には31%へ上がり、2026年9月期は第3四半期までの累計で39%に達しています。
店舗数は2021年9月末の59店から2025年9月末には234店、2026年8月には331店まで増えました。進出先は台湾・香港・中国本土の中華圏が中心で、ここ数年は中国本土の店舗が最も速く増えています。中国本土は2021年の初出店から4年で63店に達し、2026年4月には100店を超えました。
03強み:客数で稼ぐ
回転すしの価格帯は各社ほぼ同じです。それでもスシローの1店舗当たり売上は、国内で4.0億円とくら寿司(3.2億円)の1.25倍、かっぱ寿司の約2倍あります。同じ値段で多くの客を集めていること、つまり客数を稼ぐ力が、スシローの最大の強みです。
意外なことに、スシローの費用は安くありません。原価率は43.0%で、くら寿司の40.8%より高い水準です。それでも利益率が高いのは、人件費・家賃・設備といった1店舗当たりでほぼ決まった費用を、大きな売上で薄めているからです。下の図は、両社の1店舗当たり売上を同じ縮尺で積み上げたものです。
- スシロー
- 32.4% - 23.9% = 8.5%
- くら寿司並みの売上なら
- 32.4% - 29.9% = 2.4%(くら寿司の実績2〜3%とほぼ同じ)
費用の構造がそのままでも、1店舗当たり売上がくら寿司並みに下がれば、利益率はくら寿司と同じ水準まで落ちます。スシローの利益率の高さは、費用の安さではなく売上の大きさで説明できます。
04近年の業績と投資
2022〜23年は、おとり広告問題、迷惑行為動画、円安による原価高が重なり、客数と利益が大きく落ちました。そこからの回復の仕方は、国内と海外で対照的です。
国内の売上を押し上げた要因も変わりました。2024年9月期は客数の回復(+13.2%)が中心でしたが、2025年以降は値上げによる客単価の上昇が売上を支えています。国内では、値上げを続けられるかどうかが今後の論点です。
| 国内既存店(前年比) | 2024/9 | 2025/9 | 2026/9 上期 |
|---|---|---|---|
| 客数 | +13.2% | +4.2% | +2.9% |
| 客単価 | +0.9% | +5.7% | +5.8% |
| 売上 | +14.2% | +10.1% | +9.0% |
投資の性格は国内と海外で正反対
国内の新店は年13〜19店にとどまり、投資の大半は既存店の作り替えです。客席モニターや自動配膳の導入で、国内の機械装置の帳簿価額は2023年から2025年の2年で2.3倍になりました。人件費の上昇に備えて利益率を守る投資です。一方、海外の投資はほぼすべてが新店で、1店当たり約2億円をかけて年45〜55店(2026年9月期は約113店)を出しています。
資本効率:ROEの上昇はレバレッジではなく本物の改善
ROEは2023年9月期の11.7%から2025年9月期には26.3%へ上がりました。分解すると、財務レバレッジはむしろ低下しており、利益率と総資産回転率の改善がROEを押し上げています。過去の買収で生じたブランド・のれん(約840億円)を除いたROICも、3.6%から10.8%へ改善しました。
| ROEの3分解 | 2023/9 | 2025/9 |
|---|---|---|
| 当期利益率 | 2.7% | 5.3% |
| 総資産回転率 | 0.88回 | 1.13回 |
| 財務レバレッジ | 4.98倍 | 4.38倍 |
| ROE | 11.7% | 26.3% |
05営業予測
予測は国内と海外を分けて組みました。国内は、売上の伸びを2026年9月期の+8.9%(直近の実績ペースと会社計画の中間)から+4%へ逓減させ、利益率は6.8%(ブランド使用料後)で据え置きます。海外は「店舗数×1店舗当たり売上」で積み上げます。為替は直近の水準で固定しました。
中国本土の出店ペースを、外資の外食チェーンから類推する
海外の成長の中心は中国本土です。中国本土で外資の外食チェーンがどう伸びたかを見ると、ピザハット・KFC・マクドナルドのような大手でも、数千店の規模では年10〜15%に落ち着きます。数百店の段階で年34%の急拡大をした味千ラーメンは、品質問題の後に年5%へ失速しました。スシローの会社目標(2035年に中国本土500店、年約15%)は、外資大手の実績と同じ水準で、無理のない目標と言えます。
これをもとに、中国本土の店舗数に5つのシナリオを置きました。中間シナリオでは、2030年9月期に383店になります。台湾は65店、香港は55店で頭打ちとし(同じ台湾でくら寿司は60店で頭打ち)、その他の国は年20%から15%へ減速させています。
予測の結果
中間シナリオでは、2030年9月期に売上8,822億円、営業利益1,002億円となり、海外の売上比率は59%まで上がります。海外の利益率は、現在の収益構造(EBITDAマージン約23.6%、1店舗当たりの償却費はほぼ一定)が続く限り約14%で頭打ちになり、連結の利益率が上がるのは利益率の高い海外の比率が増えるためです。
| 2025/9実績 | 2026/9 | 2028/9 | 2030/9 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益(継続事業) | 4,056億円 | 5,117億円 | 7,055億円 | 8,822億円 |
| 営業利益 | 364億円 | 511億円 | 763億円 | 1,002億円 |
| 営業利益率 | 9.0% | 10.0% | 10.8% | 11.4% |
| 海外の売上比率 | 32% | 42% | 53% | 59% |
2026年9月期の予測(売上5,117億円、営業利益511億円)は会社予想(5,050億円、505億円)とほぼ一致し、2027年9月期の売上予測(6,151億円)もアナリスト11人の平均(6,142億円)と0.1%しか違いません。近い将来の成長について、本予測と市場の見方はそろっています。
06株価の評価
株価は2026年10月13日時点で5,484円です。DCF(割引キャッシュフロー法)と、比較会社の倍率(Comps)の二つで評価しました。
DCF:割引率を逆算するためのレンズとして使う
- リスクフリー
- 10年国債2.99%(2026年9月1日)から日本の信用リスク分0.60%を除いた値
- β
- 外食業種(世界410社)の値を、リース負債を含む借入水準で戻したもの
- WACC
- 6.0%(借入の比率が小さいため、株主資本コストとほぼ同じ)
この割引率で計算すると、中間シナリオの1株当たり価値は7,317円で、現在の株価より33%高くなります。最も悲観的な「味千型」でも5,881円です。ただし、価値の75%は2036年以降の継続価値が占めており、答えは2027〜30年の予測よりも、永続成長率と新規投資の利回りの前提で大きく動きます。そこで本レポートでは、DCFを「絶対値を出す道具」ではなく、株価が織り込んでいる割引率を逆算するレンズとして使います。
Comps:中国比率の高い外食ほど評価は低い
海外・中国の比率が高い外食企業のEV/EBITDA(家賃を差し引く前)は、トリドール9.1倍、海底撈5.7倍、Super Hi 4.4倍と低く、F&LCの14.5倍はその中央値の約2.5倍です。市場は中国の利益に高い割引率をかけており、F&LCにはその上で成長分の評価が上乗せされています。ここではCompsを株価の算出には使わず、市場が中国・海外の利益にかける割引の大きさを読む材料として使います。
株価と計算上の価値の差は、どこから来るか
DCFの価値(7,317円)と株価(5,484円)の差は、市場が成長を低く見ているか、より高い割引率を求めているかのどちらかで生まれます。株価だけでは区別できませんが、手がかりはあります。近い将来の成長はアナリスト予想と一致しており、2026年春の決算では上振れに株価が+12%前後反応したものの、夏の上方修正には反応しませんでした。市場の成長見通しは実績に追いついています。一方、日中関係が悪化した2025年11月17日には、業績に変化がないのに株価が1日で13.5%下落しました。
政治ニュースで急落するリスクは、平常時の値動きから測るβには映りません。証拠は、市場が中国の政治リスクに対して割引率を上乗せしていることを示しています。
07中国の政治リスクの値段
F&LC自身の株価から逆算した割引率を当てはめると、現在の株価がそのまま出てくるだけです。そこで、市場が中国の利益に求める上乗せを、F&LC以外の市場データから推定しました。株式市場全体と外食業界という、異なる二つの断面から読んでいます。
中国株の益利回り8.8%(PER 11.4倍)-日本株6.6%(同15.2倍)+成長率の差1.0%。株価=利益÷(要求利回り-成長率)より、要求利回り≒益利回り+成長率と読める。
(WACC 6.0%-成長率2.0%)×(国内中心の外食14.9倍÷中国・海外型8.0倍-1)。倍率≒c÷(WACC-g)なので、倍率が低いほど割引率が高い。
二つはどちらも市場価格から読んだ値なので独立した検証ではありませんが、断面を変えても約3ptでそろいます。この平均3.3ptを「市場の平均的な中国リスクの値段」とし、F&LCのキャッシュフローのうち中国本土の分(利益比率31%→41%)にだけ上乗せして割り引きました。
市場平均の3.3ptで割り引くと理論株価は5,887円で、現在の株価は約5.6ptの上乗せに相当します。ただし、この差は長期の新規投資の利回り(RONIC)の前提に左右されます。2036年以降のRONICを20%から15%に下げると、株価が織り込む上乗せは3.7ptとなり、市場平均とほぼ同じになります(付録C)。
08結論
事業は強く、予測も市場の見方と整合しています。株価と理論値の差は、成長の見方ではなく、中国リスクへの割引から生まれています。この差が縮むのは、中国本土の成長が続き(利益の上振れ)、同時に中国リスクの割引が平均並みに縮む(評価の上昇)場合です。
| 中国本土のシナリオ | 為替 据え置き | 円高10% |
|---|---|---|
| 味千型(失速) | 5,096円(▲7%) | — |
| 会社目標ペース | 5,303円(▲3%) | 5,134円(▲6%) |
| 外資大手型 | 5,588円(+2%) | — |
| 中間(既定) | 5,887円(+7%) | 5,663円(+3%) |
| 直近ペース継続 | 6,372円(+16%) | — |
理論値を押し上げる要因
- 2026年11月の通期決算と2027/9期の会社計画
- 日中関係の緊張時でも中国本土の既存店売上が安定すること
- 中国の外食企業の評価の回復
押し下げる要因
- 日中関係の再悪化による客数減
- 円高への反転
- 国内の値上げの限界
- 急拡大による既存店の回転率低下
注目すべき指標
- 中国本土の出店数と既存店売上
- 2028/9期以降のアナリスト予想
- 海外のEBITDAマージン(23%台を保つか)
- 国内既存店の客数
付録計算の詳細
A 株主資本コストとWACC
| 項目 | 値 | 根拠・計算 |
|---|---|---|
| リスクフリーレート | 2.39% | 10年国債2.99%-日本の信用リスク分0.60%(Damodaran、格付けA1) |
| 外食業種のβ(借入の影響を除く) | 0.66 | Damodaran、世界410社 |
| D/E(リース負債を含む、時価) | 18.3% | (借入775億円+リース負債1,507億円)÷時価総額12,463億円 |
| β | 0.74 | 0.66×(1+(1-34.9%)×18.3%) |
| 株式リスクプレミアム | 5.15% | 売上の地域で加重(日本・中国本土5.14%、台湾・香港5.01%ほか) |
| 株主資本コスト | 6.2% | 2.39%+0.74×5.15% |
| WACC | 6.0% | 株主資本94.2%、負債コスト3.0% |
B DCFの前提とフリーキャッシュフロー
| 億円 | 2027/9 | 2028/9 | 2029/9 | 2030/9 | 2035/9 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 6,151 | 7,055 | 7,946 | 8,822 | 11,572 |
| 営業利益(IFRS) | 644 | 763 | 883 | 1,002 | 1,314 |
| NOPAT(家賃控除後・税引後) | 448 | 531 | 616 | 699 | 917 |
| 純投資 | 175 | 134 | 89 | 63 | 61 |
| フリーキャッシュフロー | 273 | 398 | 527 | 637 | 856 |
| 事業価値から株主価値へ | 億円 |
|---|---|
| FCFの現在価値(2027〜35) | 4,117 |
| 継続価値の現在価値 | 12,563 |
| 事業価値 | 16,681 |
| +現金・定期預金、京樽の売却代金 | 773 |
| -借入金・社債、非支配持分 | 824 |
| 株主価値(1株当たり7,317円) | 16,630 |
C 新規投資の利回り(RONIC)の根拠と感応度
海外新店1店の投資は約2.1億円(2026/9期の出店計画174.9億円÷83店、敷金を含む)。1店舗当たり売上6.55億円、家賃・償却控除後の営業利益率13.0%、税率27%でNOPATは0.62億円となり、新店のROICは約30%です。DCFと同じ基準(家賃を費用、税率27%)で測った現在の全社ROICは37%で、リース負債を投下資本に含めた10.8%とは定義が異なります。
| RONIC(2031〜35→2036〜) | CAPMでの価値 | 中国分+3.3ptの理論株価 | 株価が織り込む上乗せ |
|---|---|---|---|
| 30%→20%(基準) | 7,317円 | 5,887円(+7%) | 5.6pt |
| 20%→20% | 7,228円 | 5,803円(+6%) | 5.0pt |
| 15%→15% | 6,933円 | 5,563円(+1%) | 3.7pt |
| 30%→WACC | 5,876円 | 4,792円(▲13%) | 0.8pt |